赤字路線、運賃値上げで「収支均衡」は可能なのか JRの「営業係数」「収支率」から試算してみた

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続いて赤字線区を見てみよう。ここから先はJR西日本が公表している2019年度の営業係数と収支率(2018~2020年平均)を基にピックアップした。

まず取り上げるのが関西本線、亀山―加茂間だ。ゴールデンウィークに筆者も乗ってみたが、そんなに利用者が少ないかというとそうでもなかった。のどかな風景の中を走る同線は貴重な存在といえる。かつては急行も走っていたというのに……。

関西本線の非電化区間を走る加茂行きディーゼルカー(写真:HAYABUSA/PIXTA)

さて、同区間の営業係数は843。つまり100円稼ぐのに843円かかっている。より具体的には、同区間は2018~2020年の年平均で収入が2.1億円であるのに対し、営業費用は17.8億円かかっており、15.7億円の赤字だという。

では単純計算で運賃を何倍すればプラマイゼロになるかといえば8.43倍。わかりやすいように加茂から忍者で有名な伊賀上野までの26.4kmを例にとると、現在は普通運賃510円、定期は月1万5010円だ。これを8.43倍すると、上野―大宮間に相当する距離で普通運賃は4300円、定期は月12万6530円。新幹線かよ?という水準になる。

潜在需要はあるかも?

同線の利用増のためには電化のうえ、湖西線や琵琶湖線のように大阪から草津線経由や大和路線経由で亀山まで新快速乗り入れといったテコ入れはできないものか。

伊賀市の岡本栄市長は5月9日、市が名古屋―伊賀間を走る高速バスと近鉄の利用状況に基づいて試算した結果、名古屋行きの乗客で年間片道約3万人を取り逃がしていると述べ、潜在需要を掘り起こすべく、JR西日本だけでなく関西線の亀山―名古屋間を管轄するJR東海とも連携し、名古屋、加茂両方面と伊賀鉄道上野市駅を乗り換えなしで結ぶ直通列車運行の実証実験を提案したという。

次いで、関西本線と同じく「幹線」である山陰本線も赤字区間が目白押しだ。城崎温泉―浜坂間の営業係数は1025で、収入は1.3億円、営業費用は13億円で赤字は11.7億円だ。城崎温泉駅からお隣、玄武洞駅までの4.3km(新宿〜池袋間に相当)は190円、定期は月5600円。これを営業係数100に持っていくには運賃約10倍!1950円といえば相生から大阪までの運賃に匹敵する。定期なら月5万7400円である。

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