赤字路線、運賃値上げで「収支均衡」は可能なのか JRの「営業係数」「収支率」から試算してみた
次は営業係数3431というすさまじい数字の大糸線・糸魚川―南小谷間だ。同区間は年平均2000万円の収入のために6.3億円を要している。糸魚川からフォッサマグナミュージアム最寄りの姫川までの3.2kmだと、現在の普通運賃は190円、定期は月5940円だ。プラマイゼロにするために34.31倍してみると、なんとたった1駅(新宿―渋谷間の距離に相当)で普通運賃は6520円。定期は月20万3800円、人によっては月給に迫る勢いだ。
最後に取り上げるのはもっともすさまじい区間、芸備線の東条―備後落合間だ。同区間の営業係数はなんと26906。つまり100円稼ぐのに2万6000円かかる。年平均収入100万円に対し営業費用は2億2000万円だ。ここまでいくと、やめてくれ!というレベルまで引き上げないと黒字にならない。
営業係数100にするには単純に言って269倍。初乗り運賃の備後落合―比婆山間5.6km(上野―新橋間に相当)は普通運賃190円なので、これを269倍すると普通運賃はなんと5万1110円。普通はオレンジ色の小さな切符に「〇〇から150円区間」などと書かれているところ、「備後落合から51110円区間」という切符になってしまうという恐ろしさだ。定期券を269倍すると、なんと1駅1カ月でお値段なんと159万7860円。1カ月分の給料どころの騒ぎではない。経理が悲鳴の大合唱だ。
都市部の利用者にも他人事ではない
いかがだったであろうか。都市部に住んでいると赤字ローカル線問題なんて自分たちに関係ない、と思う人は多いだろう。だが、毎年何億円もの赤字を出している路線があり、その赤字は事実上、都市部に住んでいる人が負担しているとすれば他人事ではなくなるのではないだろうか。
今年3月には野村総合研究所が、2040年にJRが黒字を維持するには全体で1.1~1.6倍までの運賃値上げが必要との試算を発表した。全体で1.5倍とするならば、山手線や大阪環状線でも1駅乗るだけで200円程度の運賃負担を求められることになる。
公的費用を投じるといっても財源には限りがある。無理にでも資本を投下して鉄道を残すのか、それとも別の方法で地域の交通を維持するのか。ここで出した数字はあくまで単純計算だが、本稿が都市部の方々にも赤字ローカル線問題に関心を持つきっかけとなれば幸いである。
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