日本郵政、元特別調査委員が「役員就任」の不可解 新任のコンプライアンス責任者に社員も困惑
日本郵政は「これまでも弁護士を役員(取締役)に選任しているが、前職等の欄において所属事務所等は記載していない」という。ただ、特別調査委員会の委員が役員になるのはこれが初めてであり、八田氏は「前例との比較は意味をなさない」と言い切る。
冒頭の早川氏を知る人物が「ばかばかしい」と口にしたのは、調査委員の立場からの転身で疑いの目を向けられることとは別の意味もあるという。「法律事務所にいれば高収入が約束されていただろう。公務員時代の報酬体系を引きずっている日本郵政では、早川氏の収入がおそらく半減したのではないか」という経済的な側面からだ。
見方を変えれば、早川氏は経済合理性を度外視してでも、郵政改革を自らのライフワークに位置づけたともいえる。だが、検察OBで第三者委員会やコンプライアンスに詳しい郷原信郎弁護士は「郵政改革をライフワークにするのはやめておいたほうがいい」と言う。
それは、「特別調査でかんぽの不適正募集の裏にあった全特の存在など根本的な問題に踏みこまないなど、早川氏が関わった調査は中途半端な内容だった」(郷原氏)という理由からだ。
日本郵政がよくなるとは思えない
郷原氏はこうも話す。「その早川氏が調査報告の提言が実行されているかを検証するJP改革実行委員会の横田委員の調査をサポートし、その委員会終了直後に日本郵政の重役に就いた。これでは日本郵政がよくなるとは思えない」。
では、早川氏の真意はどこにあるのか。日本郵政に早川氏へのインタビューを申し込んだが、即日、断りの返事がきた。そこで、本人氏に直接質問事項を送ったが、返事はなかった。
日本郵政グループではかんぽ不適正募集の発覚後も、局長や社員による窃取や横領、個人情報の流出など不祥事は減るどころか増える一方だ。6月17日には総務省が「日本郵政・日本郵便モニタリングレポート2022」を公表し、監督強化の方針を打ち出した。早川氏が日本郵政の重役に就いただけでは不十分と判断した格好だ。
総務省は平時からガバナンスやコンプライアンスについての報告を日本郵政に求めるほか、年2回の定期的なヒアリングも実施する。総務省が監視の目を強める中、グループCCOの役割は極めて重要なポストだ。はたして、早川氏はこの重責を全うすることができるのだろうか。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら