日本郵政、元特別調査委員が「役員就任」の不可解 新任のコンプライアンス責任者に社員も困惑

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早川氏が2022年3月まで所属していた渥美坂井法律事務所・外国法共同事業(以下、渥美坂井法律事務所)は、特別調査委員の調査に多数の弁護士を割いてきた。本調査には25人、追加調査には渥美坂井法律事務所の16人の弁護士が調査を補助した。

また、渥美坂井法律事務所は、不祥事を受けて2021年に初めて日本郵政が設置した外部通報窓口にもなっている。早川氏が執行役に就任した後も外部通報窓口のままだ。

日本郵政は「(法律事務所への)通報情報は会社と共有しない仕組みとしており、その運用を徹底する。社員への周知も行っている」とする。しかし、ある日本郵政グループ社員は「早川常務の出身母体が通報窓口では、言いたいことが言えない」と怖がる。

2021年に発覚した「カレンダー問題」でも渥美坂井事務所は15人の弁護士を割き、調査に当たっている(退職した経営幹部2人についてはDT弁護士法人の弁護士5人が調査)。カレンダー問題とは、日本郵便の経費で購入したカレンダーを全国郵便局長会(通称「全特」)の指示で、全国の郵便局長が支持政党である自民党の支持拡大のために配布していたのではないか、という問題だ。経費は3年分で10億円と少額ではない。

2カ月余りの調査を経て2021年12月下旬に公表した調査報告書はわずか18ページ。「一部の郵便局長が会社業務と局長会業務(=政治活動)をしゅん別することなくカレンダーを配布していた事実が認められる」としながらも、「因果関係は不明」とし、「政治資金規正法に抵触しない」と結論づけていた。

会社は堂々と詳しく情報を開示すべき

渥美坂井法律事務所の広報担当弁護士は「早川先生の常務執行役就任に法的な問題はないと思うが、法律事務所には厳しい守秘義務が課せられていて、何も話せない」という。

コーポレート・ガバナンスやコンプライアンスに詳しい八田進二・青山学院大学名誉教授は、「調査を終えた後に顧問や役員として調査対象会社の側に立つのは、大いに問題がある」と話す。特別調査委員会の委員だった早川氏の常務就任について、「(後ろめたいことが)何もなければ、会社は堂々と胸を張って自ら積極的に就任理由や経緯、就任時に交わした約束や年収などの条件を詳しく開示すべきだが、それもない」と指摘する。

日本郵政が早川氏の常務執行役就任を公表した3月29日付のニュースリリースの前職欄には「弁護士」としか書かれていなかった(冒頭の写真参照)。そのため、「調査委員だった早川氏だとは、すぐに気づかなかった」(ある社員)と言われる。こうした公表の仕方について、「作為的であり、郵政との過去の関係をスルーしてもらいたいという意図があったのではないか」(八田氏)。

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