伝説の編集長が教える『会社四季報』夏号活用法 株価が上昇しそうな「熱い銘柄」を探すには?

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一般に会社側が決算発表と合わせて公表する新年度の業績見通しは、例年1~2月から社内の各部署で予算を積み上げて作った新事業計画に多少手を加えたものとなっている。

これが5月に発表されるときには、作成開始からすでに約3カ月が経過している。その間に原油価格や為替相場、商品市況といった業績に影響する要素が著しく変動してしまうこともある。

今年2月、ロシアによるウクライナ侵略が突如始まり原油や小麦価格が高騰、日本でも値上げラッシュとなるなど世界がインフレを警戒し始めたのがまさにそうだった。こうした時は各企業の為替感応度などをもとに業績影響を計算し、独自に予想を引き直すことはめずらしくない。

たとえばトヨタ自動車(7203)。夏号で、会社側の営業利益予想2兆4000億円に対し、会社四季報予想はやや強気の2兆8500億円となっている。この増額には何か特別な意味があるわけではなく、業績コメント欄に「会社為替想定1㌦115円は保守的」とあるように、想定為替レートを20年ぶりの円安水準となった1㌦130円台に引き直しただけのこと。トヨタ自動車は1㌦1円の円安で年間450億円、対ユーロは60億円の増益要因となる。株価はとうの昔に織り込み済みで、サプライズはない。

 また、業績予想には各社「癖」のようなものがあって、甘い業績予想というか希望的観測に近い数字を出してくる会社もあれば、保守的に極めて堅い数字を出してくる会社などさまざまだ。こうした会社の習性は記者も承知しているので期初段階から予想数字を作り直して掲載している。が、数字をいじくれるのはそこまでだ。それを超えて弱めの数字にしたり強めの数字にしたりするだけの合理的根拠は、夏号の制作段階ではまだ希薄なのである。

増額銘柄の多くは“為替マジック”

試しに夏号をスクリーニングしたところ、会社四季報予想の営業利益が会社予想より10%以上強気だった銘柄は全部で150ある。

(出所:筆者作成)

決算期別に見ると、3月期会社は150社のうち58社と最も多い。先ほど「数えるほどしかない」と述べたのと矛盾しているように思えるかもしれないが、2356社を数える3月決算会社全体から見れば、わずか2.5%にすぎない。

次ページこの58社を細かくチェックしてみると…
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