16歳の原節子が出演した「ナチス出資映画」の中身 ナチスが政権獲得からの「ナチ映画」の系譜とは

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リーフェンシュタールの作り出す整然と構築された映像美、モンタージュ技法は、ナチスの思想の是非とは別に、純粋な映画作品として高い評価を得ており、1936年ベルリン五輪を記録した『オリンピア』は、数あるオリンピック映画史上最高峰と言われる。

彼女の生涯と本作については、最晩年にインタビューした沢木耕太郎氏の『オリンピア~ナチスの森で』に詳しいが、意図した通りの映像を撮るため競技終了後に実際の選手の協力を得て夜半に再撮影するなど、今日では考えられない、記録映画の趣旨を逸脱した製作手法とそれが許されたという事実には驚かされる。

原節子が出演した「ナチス出資映画」

『新しき土』は、ナチス出資による、日独の関係強化のため日本で撮影された国策映画。監督別に2版がある。ファンク版ドイツ語原題「Die Tochter des Samurai」は「侍の娘」の意、伊丹版の「新しき土」とは、日本が「生命線」と呼び、新領土とした満州国を意味する。ドイツ版監督アーノルド・ファンクはリーフェンシュタールの師であり、恋人でもあった山岳映画の巨匠。

本作ではドイツから帰国したドイツかぶれの日本人青年をめぐり、ドイツ人女性、日本人の許嫁の娘との三角関係が描かれるが、あらすじがどうという作品ではなく、ドイツ人の目から見た戦前の日本の風景、当時16歳の原節子の美貌が見どころだ。主演の原節子はドイツでの公開に合わせ渡欧し、1937年4月15日、ベルリンで宣伝相ゲッペルスに会っている。

『チャップリンの独裁者』はチャップリンが一人二役でヒトラーを模した独裁者ヒンケルとユダヤ人の床屋チャーリーを演じ、最後に瓜二つのふたりが間違えられ入れ替わるというドタバタコメディ。ラストの、ヒンケル(実はチャーリー)が民主主義の尊さを讃える6分間の演説シーンは映画史に残るものだろう。

『生きるべきか死ぬべきか』はユダヤ系ドイツ人で戦前を代表するコメディ作家エルンスト・ルビッチ(1892年生)の代表作。大戦下のワルシャワを舞台にした、ウェルメイドなコメディながらナチスに対する強烈な批判精神を感じさせる。

『死刑執行人もまた死す』は、チェコ副総督ハイドリヒ襲撃の犯行直後から物語が始まるサスペンスで、ハイドリヒやゲシュタポを見るからに冷酷で悪辣な存在として描き、チェコ・レジスタンスの英雄的行為を鼓舞する反ナチプロパガンダ作品である。ルビッチ作同様、ナチス全盛の時代にこのような作品群が米国で作られていたことが興味深い。

監督のフリッツ・ラングは1890年オーストリア出身。母親はユダヤ系で、『メトロポリス』(1927年)などで知られる鬼才。ドイツで活躍後1937年に亡命してアメリカに渡った。

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