デフォルトのロシア鉄道、遠のく「旅情満点」の旅 鉄道を観光資源にしようとしていた矢先に…

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「ロシア号」は2019年にはシャワー付き車両が大幅に増備され、2020年には毎日運行へと増便されたばかりだった。それまでは隔日運行で、「ロシア号」が走らない日は途中のエカテリンブルクで乗り換えであった。

超長距離を走る列車はほかにも人気のルートがあり、モスクワ-ウランバートル間の「ゴールデン・イーグル・トランス・シベリアン・エクスプレス」は、運営にヨーロッパ企業も名を連ねる豪華観光列車で、沿線を観光しながらこの間を15日間かけて運行、料金もクルーズ船ほどの高額であった。

庶民的な列車もあり、モスクワ-ウランバートル-北京間には定期列車が週2便(夏季は3便)、この列車はモンゴル・中国国境で乗客を乗せたまま台車交換が行われるため、世界の鉄道ファンにとって「一度乗ってみたい」列車だった。

このほか、ウランバートル-イルクーツク間は毎日運行の列車があり、2泊3日の行程と比較的距離が短いので、人気の列車であった。

ロシアは国土が広いため、縦横に寝台列車が数多く走り、庶民の移動を支えている。西ヨーロッパの鉄道が対航空機を意識した高速列車ばかりになってしまうなか、ロシアの長距離列車は電気機関車が引く寝台列車だ。都市近郊や都市間を結ぶ「エレクトリーチカ」と呼ばれる近郊電車も全土に走っていて、汽車旅は旅情に満ちていた。近年は空港アクセス鉄道にも力を入れ、主要都市の空港へ「アエロエクスプレス」を運行していた。アエロエクスプレスは前述のエレクトリーチカより運賃が高く、多分に外国人旅行者などを意識した運行であった。

かつての旧ソ連は体制の違いから、怖いイメージもあったが、現在のロシア鉄道はソフトなイメージが先行し、外国人旅行者が鉄道の旅をしやすい環境になっていただけに、今回のウクライナ侵攻は残念で仕方がない。

日本から気軽な渡航地になるはずだった

日本から見ると、極東ロシアと呼ばれる地域が注目されていた。2013年からロシアのS7航空が成田-ウラジオストク間に就航(後にハバロフスクからも)、S7航空は日本航空と同じ航空連合「ワンワールド」に参加していたため日本航空とのコードシェア便であった。

ウラジオストクは成田から約2時間30分、日本に最も近いヨーロッパとして人気上昇中だった。何しろ成田からの飛行距離はソウルより近いのだ(東京からソウルが758マイルに対し、ウラジオストクへは676マイル)。制度面でも日本からウラジオストクエリアのみの渡航にはビザも免除された。

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