早期リタイア「FIRE」を目指して結局後悔する理由 FIREの資金ができた頃、「つまらない人間」に
具体的な数字をイメージしよう。手取り収入が年間500万円だと想定しよう。王道のメソッドでFIREを目指す人は手取りの半分、つまり250万円で生活する。手取りの半分で生活する自分を想像してほしいが、かなり慎ましい生活になるはずだ。
慎ましい暮らしをすることの喩えで「爪に火をともす」という言葉がある。FIREを目指すために、爪に火(FIRE)を灯すような生活をすると、人間としてつまらなく、そして小さくまとまってしまう危険性が大いにあるのではないか。
一方で、FIREなど考えず「手取りの2割」を運用している場合、自由に使えるお金は1年で400万円となる。第1章で触れたように、「2割」はサラリーマンの場合、概ね老後の支出の辻褄が合う貯蓄水準だ。
お金は教育投資に使うべき
両者には年間150万円の支出の差が生まれる。この差額の150万円を自分の人的資本を上げる「能力・経験・時間・人間関係」に使うと、その人は「稼ぐ力」がより大きくなるだろうし、それだけでなく、より魅力的な人間になっている可能性が大きいのではないか。
教育投資に使えば、能力や知識が増えるだろう。美味しいものを食べたり、旅行に出かけたり、映画を観ることで知識は増える。人間関係も拡がるだろう。そして、経験や知識、人脈の差は、稼ぐ能力に大きな影響を与える。
しかも自分への投資は、早く行うほど回収期間が長くなるため、両者の差はさらに拡がっていく。お金は使うことに意義があり、手段として有効に使うべきだ。たとえば、美味しいものを食べることにだって意味がある。
かりにレストランで食事をするとして、ワインのリストから自分の気分に合うものを選べない、あるいはアラカルトメニューから注文できないような人といてもおもしろくない。
「オススメはなに?」「同じので」「おまかせで」というような人物と食事をしているといたたまれなくなる。そういうつまらない人と食事をしても楽しくないから、そんな人は人間関係も拡がらない。