石炭不足の英SL鉄道、「人糞燃料」が救世主に? 炭鉱閉鎖や輸入困難で「バイオ石炭」注目高まる
保存鉄道協会(Heritage Railway Association、HRA)のスティーブ・オーツ最高経営責任者(CEO)は英紙の取材に対し、「次の石炭供給がどこから来るかわからない」と嘆いている。同氏によると、「国内での石炭供給を維持するために、いくつかの炭鉱の延命について、英国政府、ウェールズ政府と協議しているさなか」だという。
当面の解決策としては、海外から石炭を輸入するという手がある。オーツCEOは「新しい石炭の供給源を求めて、世界中を精力的に調査している。いまは、オーストラリア、南アフリカ、モザンビーク産の石炭が使えるかどうか調べているところだ」と話す。
最近、運行路線を延長したグロスターシャー・ウォリックシャー蒸気鉄道(GWSR)はこの4月、ウェールズ産石炭を約50トン入手したが、国産石炭はこれをもって在庫切れで、すでにコロンビア産石炭を使ってSL運行を行っている。
GWSRのリチャード・ジョンソン会長は、「経済的にも環境的にも理想とは言い難い」と指摘。「ウェールズ南部から運び込む場合に比べ、コロンビアから持ってくる輸送にかかる二酸化炭素(CO2)排出量ははるかに多くなる」と現状を憂う。しかも品質が不安定な上に、今年の1〜4月の石炭にかかるコストは4万5000ポンド(約736万円)も増えたという。
保存鉄道の安定運営に懸念
英国にある150カ所もの保存鉄道を訪れる観光客らのおかげで、年間の経済効果は5億ポンド(約818億円)に達するとも言われる。
筆者は先日、線路幅が381mmと、公共の鉄道としては世界で最も狭いという「ロムニー・ハイス・アンド・ディムチャーチ鉄道」(RHDR)に乗車した。その際に乗り合わせた50代の男性は、全線乗り放題の運賃が24ポンド(約4000円)と安くはないが、「プレミアリーグサッカーの試合を見に行って、ビールでも飲んだらこれの数倍はかかる。週末を楽しむアトラクションとして、値頃感はむしろ安いくらい」と話していた。
だが、その維持運営は決して楽ではない。「英国の保存鉄道はボランティアを主体として運営されている。コストの増加は安定的な運営の面から見てきついのではないか」。欧州各地にある保存鉄道の撮影をライフワークとしている和歌山県在住の田中貞夫氏は懸念する。
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