コロナ時短命令「違法」判決が示す過料制度の欠陥 グローバルダイニングの請求そのものは棄却

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あらためて判決を精査すると、命令を発出するにあたって「特に必要があると認める」事情があるかどうかが1つのポイントだった。命令に違反した場合には、過料に処す前提になるのだから、その運用は慎重でなければならない。

判決ではまず、2021年2月と3月に内閣官房が都知事などへの事務連絡で「個別施設に対して命令を行う判断の考え方や基準について合理的な説明が可能であり、公正性の観点からも説明ができるものになっているかに留意すべきである旨指摘した」と言及した。

そのうえで東京都が、グローバルダイニングは上場企業で知名度も高く、夜間の営業を続けることで飲食につながる人の流れを増大させ、市中感染のリスクを高めている、と主張することについて、同社の店舗が換気や消毒などの対策を取っていたこと、命令が発出された時点で、都内では2000あまりの店舗が要請に応じず夜間営業を継続していたことから、いかに上場企業であるとはいえ、2000あまりの店舗の1%強を占めるにすぎず、同社の店舗の夜間営業の継続が「ただちに飲食につながる人の流れを増大させ、市中の感染リスクを高めていたと認める根拠は見出し難い」とした。

4日間しか効力がないのに発出した合理的説明がない

また、命令が発出された3月18日の時点では、すでに3月21日で緊急事態宣言が解除されることが決まっていたことについても触れ、「本件命令は4日間しか効力を生じないことが確定していたにもかかわらず、被告(東京都)が同命令をあえて発出したことの必要性について、合理的な説明はされておらず、また、同命令を行う判断の考え方や基準についても説明がない」と断言した。

2000店あまりが夜間営業を続けていたにもかかわらず、同社の26店舗のほかに6店舗(6事業者)にしか、命令を出さなかったことも、「不公平なものであり、内閣官房の指摘する公正性の観点からの説明は困難といわざるを得ない」とした。

「以上のとおりであるから、本件命令に付き、原告が本件要請に応じないことに加え、本件対象施設につき、原告に不利益処分を課してもやむを得ないといえる程度の個別の事情があったと認めることはできない。したがって、本件命令の発出は特に必要であったと認められず、違法と言うべきである」

判決はそう指摘している。

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