止まらぬ「円安」で広がるイギリスとの"絶望格差" 「為替レート=国力」の視点で円安を捉え直す

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また、ほぼ2年以上、新型コロナの影響で、海外旅行は難しい状況が続いていますが、このまま円安が続くと、国境を跨ぐ往来が自由になったとしても「海外旅行は高嶺の花」になってしまいます。

海外にいっても、現地通貨建て価格を円に換算すると高額になってしまい、高級ホテルに泊まれない、有名レストランにいけない、お土産もあまり買えない、といった具合です。

今年1月、国際決済銀行(BIS)が発表した統計によると、円の通貨としての総合的な実力を示す「実質実効為替レート」が、1972年6月以来、約50年ぶりの低水準に落ち込んだとのことです。

1972年と言えば、まだ、日本人が気軽に海外旅行ができるような時代ではありませんでしたが、極端に言えば、それに近い状況にまで来てしまっているとも言えます。

留学ができず、人材も来なくなる

海外旅行よりも、重要で深刻なのは、人材への影響です。円安であれば、海外からの留学生は日本に来てくれるかもしれませんが(そもそも、日本の大学に魅力がなければ来てくれませんが)、日本人の海外留学は費用の面でより厳しくなります。

また、外国の優秀な人材が、円で給与を支払う日本企業で働く気になるでしょうか。日本人でさえ、外国企業で働いたほうがよいと考える人が増えるでしょう。国土も狭く、資源もない日本で、人材は成長のカギですが、円安はこの人材にも大きな影響を与えます。

ロンドンに話を戻しますが、ロンドンに住む「円を持った日本人」が、日本と同じような物価水準を感じる円ポンドレートはどのくらいでしょうか。当然、ロンドンでも、他都市と比べ、高いものも安いものもありますが、ざっくり言うと「1ポンド=100円」といったところでしょう。

「地下鉄初乗り運賃」も「フィッシュ&チップス」も「回転寿司」も、100円換算だと、ある程度、納得感のある価格になります。通常、二国間の為替レートは、両国の物価が同じようになる水準に落ち着くものですが、なぜ、ポンドは、1ポンド=100円という実感よりも高いのでしょうか。

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