止まらぬ「円安」で広がるイギリスとの"絶望格差" 「為替レート=国力」の視点で円安を捉え直す

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ロンドンの物価は欧州の他都市と比べても高いと言われていますが、それ以上に、この異様な物価の高さは「ポンド価格を円換算した」ことが原因です。駐在当時、現地の日本人の間では、よく、「円換算すると何も買えない」と言っていましたが、まさに「円換算した価格が異様に高い」のです。

円ポンドレートは1990年前後を境に、それまでの1ポンド300~400円という水準から、200円前後の安定期に入りましたが、筆者が駐在していた時期の180円はまだ恵まれていて、年平均値をみると、2007年に235.6円を記録しています。もはや、先ほどの地下鉄最低料金の円換算も怖くてできません。

イギリス人から見ればすべてが安い

ここで、「ポンドを持ったイギリス人」が東京で生活した場合、どういうことが起こるが考えてみましょう。簡単に言えば、英国に住む「円をもった日本人」とまったく逆の感覚になります。つまり、円価格をポンド換算すると「すべてが安い」のです。東京の地下鉄の初乗りは約1ポンドですし、1000円のランチも約6ポンドで済みます(いずれも165円換算)。

かつて、東京は世界一物価が高い都市と言われましたが、30年にも及ぶデフレ下で、円建ての物価自体も安くなっていますので、今、ポンドを持って東京に住んでいる英国人は、さらに、その「安さ」を実感していることでしょう。自国通貨が高い(強い)ことは、非常に喜ばしいことなのです。

以上のように、為替レートの影響は、相手国で生活した場合、より切実に実感できますが、見方を変えると、私たちの国内での生活にもさまざまな影響をもたらすことがわかります。足元で急速に進んでいる「円安」を考えてみましょう。

言うまでもなく、日本は資源・エネルギーや食料などの輸入大国ですので、円安下では、輸入価格が上昇し、最終的には小売価格も上がります。資源・エネルギー価格の上昇は、光熱費の値上がりはもとより、輸送費などの上昇にもつながり、結果、国内産品の店頭価格も上昇してしまいます。

また、日本の不動産も、外国からみれば、自国通貨建てでは、どんどん安くなりますので、お買い得となります。円安下で、さらに海外から投資が拡大し、不動産価格が上がれば、将来、実際に買いたい日本人が高くて買えないということにもなりかねません。

不動産を企業に置き換えることもできます。競争力や潜在力のある日本企業が、海外企業に安く買収されてしまいます。

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