そこまでやるか!ドイツ自治体「難民支援」の凄み 過去の反省がウクライナ難民対策に生きている

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カフェではゆっくり語り合う機会ができるのは当然だが、同非営利組織のメンバーがボランティアでカフェに待機し、相談や所定の書類申請の書き込みのために翻訳などの手伝いを行う。また、子どものために、ドイツの学校制度についての説明会なども行われている。

ウクライナ人コミュニティの代表オレスト・ズブ氏と(左男性)と「難民カフェ」のボランティアにきているメンバー。この中には難民としてやってきて、ほどなくして「支援する側」にまわった人もいる(写真:筆者撮影)

ちなみにウクライナ難民はビザなしで滞在可能。市役所で亡命給付申請、居住許可申請ができる。これによって市内の文化、教育、スポーツクラブなどのサービス、公共交通などが割引される証明書が発行されるほか、社会保障関係の給付を受けることができる。その最初の登録は外国人にとってハードルが高いだけに、このカフェは難民にとっては心強い場所だ。

「難民に一流、二流があってはならない」

ヨーロッパの歴史に目を転じると、戦争と同時に難民が発生している。第2次世界大戦後も、難民流入で人口が増加した町も少なくない。島国の日本社会から見ると、「難民慣れ」があるようにすら見える。現在も課題は多くあるが、それでも「支援が必要な人」がやってくる現実があり、人道主義や庇護の考え方も練り上げられてきた。

こうした素地はあるものの、今回の早い支援活動は「2015、2016年のシリアなどからの難民危機のときの経験が生きている」と、エアランゲン市のディーター・ロスナー氏は述べる。ウクライナ戦争が始まったころから、市は難民支援に関連するすべての部署、特に社会福祉や青少年福祉関係との連携を急いだ。ほかの組織とのネットワークはすでに確立されていた。

ロスナー氏(写真:筆者撮影)

一方、2015年と今回とでは難民支援に対する「情熱」が違うという指摘が当初からドイツ国内でもある。それはウクライナ難民は「白人だから」というものだ。それに対して、ロスナーさんは次のように述べる。

「ドイツ社会としてすべての難民に対して同じ連帯と開放性を示さなかったのか。難民の出身国によっては、ドイツの社会的統合のプログラムにアクセスもできず、就労も禁止されている。庇護申請の決定に長期間待たねばならず、国外追放をおそれている人もいる。こうした状況を見ると(2015年の難民対策には)大きな失敗がある」

そして、次のように続ける。「この経験に基づいて(支援体制を)構築しなければならないし、難民に一流、二流があってはならない」。

今回の戦争における難民問題を地方自治体から見ると、過去の難民危機のときにできたネットワークやノウハウが生きていることがわかる。それと同時に新たな反省や課題を見いだすこともでき、理想とする連帯の原則がこうした形で鍛えられているともいえる。

高松 平藏 ドイツ在住ジャーナリスト

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たかまつ へいぞう / Heizou Takamatsu

ドイツの地方都市エアランゲン市(バイエルン州)在住のジャーナリスト。同市および周辺地域で定点観測的な取材を行い、日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。著書に『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか―質を高めるメカニズム』(2016年)『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか―小さな街の輝くクオリティ』(2008年ともに学芸出版社)、『エコライフ―ドイツと日本どう違う』(2003年化学同人)がある。また大阪に拠点を置くNPO「recip(レシップ/地域文化に関する情報とプロジェクト)」の運営にも関わっているほか、日本の大学や自治体などで講演活動も行っている。

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