そこまでやるか!ドイツ自治体「難民支援」の凄み 過去の反省がウクライナ難民対策に生きている

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「戦争中という常態」という風景ができあがってきたのは、4月ごろからだろうか。拙宅の近所でもウクライナの難民をちらほら見かけるようになったのだ。

エアランゲン市でも難民支援の動きは早かった。その特徴は組織、施設、ヒトなど、都市の中に「あるもの」を連携させて支援資源化するやり方だ。

例えば、非営利組織で運営されているスポーツコミュニティや市の体育館は一時宿泊所にされた。簡易ベッドの設営などの設置が必要だが、それを行ったのが、ドイツには消防所や赤十字をはじめ、災害時に重機などを使った支援を行う「技術支援隊」という市内の組織である。

貧困者向けのフードバンクも難民支援

同市内には、貧困者のためのフードバンクがあり、食糧は寄付で募る。ここもウクライナ難民向けの食糧供給も行った。ストックが枯渇すると地元の新聞が記事にし、市長も自らSNSで寄付を呼びかけた。市内には企業経営者が設立した財団があり、こちらもフードバンクに寄付をした。

市内の高校生による募金活動(写真:筆者撮影)

ドイツの多くの自治体にある市民教育機関では、語学学習も充実している。この中には「外国語としてのドイツ語」を学ぶコースもあるが、エアランゲンの市民教育機関ではウクライナ難民のためのコースが早々に開設された。また、難民のためにボランティア活動をする人向けにも、簡単なウクライナ語を学ぶ「ボランティアのためのウクライナ語コース」も作られた。

地元の銀行も動いた。IDさえあれば簡単に口座を開設できるようにした。これによって、行政機関などからのお金を受け取ることもできる。また同市内の大学病院は戦争が始まって間もないころ、コロナ患者の負担もある中、ウクライナからの負傷者を受け入れる構えを示していた。4月末には地雷で負傷した29歳の女性が搬送されてきた。

市内の企業が大学に売却した社屋は、今年の6月中旬から2023年12月までの間、一時宿泊所に転換された。現在、キッチンや洗面所などの居住のための設備を追加し、中庭にもコンテナ型のシャワーが準備されている。約400人滞在可能で、市内の援助組織がその運営を行う。

市内の起業の支援を行う施設にあるカフェの窓にウクライナの大きな旗が掲げられるようになったのは4月末。ウクライナ関係の非営利組織が、難民のためのカフェを作ったのだ。

ドイツには戦争前からウクライナ国籍の人が13万5000人いるが、エアランゲン市にも在独ウクライナ人が住んでいる。こうした人たちが立ち上げた非営利組織があり、代表のオレスト・ズブ氏がエアランゲン市長らとアイデアを交換し、カフェを実現した。カフェには子ども向けにウクライナ語の絵本も用意されている。

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