「相続のプロ」が実父に遺言を頼んでかかった歳月 元気なうちの遺言作りは誰でも気が進まない

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遺言書の種類、つくり方は法律で定められていて、それ以外の方法で作成されたものは無効です。「あの人は、生前にこう言っていた」といった口約束や、録音テープや動画を残していても、遺言としての法律上の効力はありません。

遺言には、大きくわけると、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2種類があります。

〈自筆証書遺言〉
遺言者が自分で全文、日付、氏名を書いた遺言書。自筆が条件であり、代筆やテープへの録音は無効だが、平成31年1月13日以後は自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成できるようになった。また法務局に作成した遺言を預けることもできる。遺言者がひとりで作成できるので、費用もかからず、簡単に作成できる。財産の情報が外部に漏れることもない。しかし、紛失や偽造のおそれがあり、内容に不備があると無効になる。
〈公正証書遺言〉
公証役場(公正証書の作成を行う官公庁)で作成してもらう遺言書。専門家が作成するため法的効力が強く無効になりにくく、紛失や偽造のおそれもない。ただし、財産の価格をもとに公証人手数料がかかる。

約6000件の相続案件を見てきて思うのは、

「うちには財産がないから、遺言書なんて書かなくても大丈夫」
「うちは兄弟仲がいいから、財産の分割で揉めることはない」

と考えている人のトラブルが増えていることです。

相続が発生した場合の「法定相続分」(誰が、どれだけの財産を受け継ぐか)は、民法で決められています。ところが、現実には、

「財産が不動産だと、きれいに分割できない」

「親の面倒を見てきた子どもと、そうでない子どもが同じ配分でいいのか、といった心情的なわだかまりがある」

「被相続人の中には、配偶者や子どもだけでなく、孫や親戚にも財産を残したいと考える人がいる」

といった理由から、規定通りに相続が行われることはまれです。したがって、次のような場合には、揉めごとが起きないように遺言書を作成して、「誰に、どの財産を、どれだけ譲るか」をはっきりさせることが大切です。

〈遺言書を残したほうがいいケース〉
●不動産など、分割しにくい財産がある
●特定の人に特定の財産を指定したい
●前妻(前夫)との間に子どもがいる
●法定相続人以外にも財産を譲りたい
●相続人がいない
●夫婦の間に子どもがいない
●社会的に意義のある団体に寄付をしたい
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