迫る参院選で「優勢」の岸田自民党、実は死角だらけ コロナ対策や景気対策、防衛費増額など難題山積

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年金の減額も政権批判につながる可能性がある。平均給与が下がっているため、それに連動する公的年金も引き下げられる。

厚生労働省によると、4月から国民年金が月額259円下がって6万4816円、厚生年金(夫婦2人分、モデルケース)が月額903円下がって21万9593円になるという。首相官邸のスタッフは「4、5月分の年金が6月15日に支給され、郵便局や銀行の口座で減額を知った高齢者が政権に不満を募らせるではないか」と気をもんでいる。

野党側はここぞとばかり、「高齢者へのしわ寄せ」と批判するだろう。政権側は、低所得者には給付金支給などで対応していると説明するだろうが、高齢者の理解が得られるとは限らない。

岸田首相は「新しい資本主義」を掲げてきたが、当初、目玉だった格差是正のための富裕層増税は、株式の売却益や配当への課税強化が見送られた。代わって「人への投資」などが強調されているが、予算の裏付けも乏しく、世論の関心も集めていない。

一方、新型コロナウイルスの感染対策で、岸田政権はワクチン接種で出遅れ、医療体制強化のための法整備も進めていない。このところ、新規感染者数は減少傾向にあり、この間に検査や医療の体制整備を急ぐ必要があるのだが、医師会などの抵抗もあり、抜本的な改革は進んでいない。

細田議長のセクハラ疑惑、「桜を見る会」問題も

自民党の不祥事にまつわる報道も止まらない。自民党最大派閥の清和会(現在は安倍派)の前会長でもある細田博之・衆院議長の女性記者らへのセクハラ疑惑は週刊誌をにぎわしている。

安倍氏が首相在任中に開催した「桜を見る会」は、大勢の地元後援会員を招待するなど公私混同が明らかになったが、その前夜祭に安倍事務所が資金補填していたことに加え、こんどは大手飲料メーカーのサントリーが大量の酒を無償で提供していたことが発覚。野党側は批判を強めている。

こう見てくると、いまの岸田自民党は「突っ込みどころ満載」なのだが、参院選は盛り上がりを欠き、岸田自民党は安泰という見方が大勢となっている。なぜか。主な理由は2つだろう。

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