70年代のアメリカを知らずに今の世界は語れない 空白などでなく現代を規定する諸要素が生まれた
作家カート・アンダーセンは次のように述べている――「私が1970年代アメリカの特徴だと考えることが3つあります。それが個人主義、ノスタルジア、そしてファンタジーです。これらは今日のアメリカを特徴づけるものでもあり、すなわち70年代は現在のアメリカが生まれた場所だと言えるのです」
アメリカの歴史学者のほとんど、いやむしろ世界中のほとんどの歴史学者が、1970年代のアメリカを「空白の10年」だと見なしています。しかし私は、それは誤った見方であると考えています。
70年代は不当に軽視され、完全に誤解されているのです――テレビで見るような野暮ったい髪形とポリエステルのファッション、ペット・ロック(石をペットに見立てて愛玩する遊び)などの馬鹿げたブームだけだったと。
政治への不信と自信喪失の時だが重要な時期だった
たしかに、70年代のアメリカは衰退の時代です。オイルショックによる石油不足、政治への不信と自信喪失の時でした。ですが、改めて見直してみると、それが非常に重要な時期であったことに気づくはずです。なぜなら、この時期が多くの意味においてアメリカの、ひいては今日の世界というものの「種まき」の時代であったからです。
21世紀、私たちが生きている世界を思い浮かべてください。職場のキャリアウーマンと、家庭において神経質になっている男性。熱烈な保守派と、アメリカだけでなく世界中で動員された左翼との間の二極化。ポップカルチャーの世界においては、映画・音楽・インターネットなどを見れば、反抗的で大胆な表現に溢れています。人々は真実を言うことを恐れず、セクシュアリティや暴力の現実を暴きます。
こうした現象は1960年代後半にはまだ見られなかったことでした。それらはすべて70年代に始まったことなのです。ですから、アメリカと世界がどのようにして今日に至ったのかを知りたければ、1970年代を見ることが必要なのです。
過去のある時期のカルチャーを振り返ることには、相反する二つの意味があります。
一つは、当たり前ですが、現在の私たちの生活は、過去を生きた人々の選択によって作られたものであるということです。ですから、私たちが何者で、どこから来たのかを知るためには、歴史を振り返ってみる必要があります。すなわち、過去は現在の私たちの生活の中に「リアル」に存在するものだということです。