70年代のアメリカを知らずに今の世界は語れない 空白などでなく現代を規定する諸要素が生まれた
1970年代とは何だったのか
第二次世界大戦後、アメリカは超大国として世界に君臨した。ソ連との冷戦は熾烈を極めたが、その一方で戦争中から続いた好景気とケネディ大統領時代の「ニュー・エコノミクス」と呼ばれる積極財政により、60年代初頭のアメリカは高い経済成長率を達成した。国民の多くが「中流階級」としてマイホームを購入し、子どもを大学へ進学させることができるようになった。この時代のアメリカはまさに「黄金時代」を謳歌していた。
しかし、ベトナム戦争への介入やケネディの暗殺、黒人層による公民権運動などの様々な出来事の余波があらわになり、60年代半ば以降、国内の状況にも次第に混乱が生まれ始める。そして迎えた70年代、景気も低迷、しかしインフレは加速するスタグフレーションという新たな事態にも直面する。ベトナム戦争も事実上の敗北で幕を閉じた。安定した暮らしや将来への希望は失われ、アメリカにとって70年代は「空白」でしかなかったとされる。
しかし、カルチャーの視点から見ると、別の側面が見えてくる。70年代は空白などではなく、むしろ現代のアメリカ、そして現代アメリカの社会構造を規定している諸要素が生まれた時代だったのではないか。