日本の食料自給率向上を「米国が絶対許さない」訳 米国にとって日本は「食料植民地」となっている
食料の60%以上を海外からの輸入に頼る日本とって、アメリカは最も依存している相手国だ。農林水産省が公表している「農林水産物輸出入概況」によると、2021年に農産物の輸入が金額ベースで最も多かったのがアメリカの1兆6411億円で、全体の23.3%を占める。次いで中国の10.1%、カナダの6.9%、豪州の6.7%、タイの6.2%と続く。
しかも第2位の中国からの輸入は、冷凍野菜や鶏肉調整品などの比較的カロリーが低いものに比べて、アメリカからは穀物や牛・豚肉などのカロリーが高いものが多い。
価格が高騰する小麦の8割以上を輸入に頼る日本は、アメリカに45.1%依存し、カナダの35.5%、豪州の19.2%と、この3カ国で占められる。ほぼ100%を海外に依存するトウモロコシは、アメリカからの輸入が72.7%を占める。自給率が21%の大豆も、74.8%がアメリカからの買い付けだ。
牛肉は豪州の40.5%と拮抗しているとはいえ、42.2%がアメリカからでこの2カ国で8割を超えているし、豚肉も27.1%とカナダの25.7%をしのいで最も得意な輸入先だ。ちなみみに2020年の豚肉の自給率は50%で、その前の年は49%だった。
きっかけは1960年の新日米安全保障条約
こうしたアメリカ依存の食料供給体制は、昭和の時代からずっと変わることがない。
始まりは、新日米安全保障条約だった。戦後、サンフランシスコ講和条約と同時に締結された日米安保条約を、1960年1月に改定した。そこに両国の経済協力条項が、あらたに盛り込まれる。
これによって、のちに「東洋の奇跡」とも称された戦後日本の高度経済成長がはじまる。日本は生産性の優れた工業を特化。安価で性能の高い工業製品をアメリカ市場に売り込む。一方で、アメリカからは安価な穀物を主体とした農業製品を輸入。こうした対米輸出入型の貿易構造を立ち上げたことで経済成長が進んだ。
戦時中の食料不足にあえぎ、戦後の農地解放もあって食料自給率を急速に80%近くにまで伸ばしていた日本だったが、この1960年をピークに下降していく。それも着実な右肩下がりで、平成になると50%を割り込み、東日本大震災の前には40%を切り、そして令和になってはじめて37%を記録している。それだけ食料の海外依存、とりわけアメリカを中心に依存度が増していったことになる。
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