プーチンの「絶対ブレない」日本に対する本音 大国として振る舞うロシアが認める大国
「ウラジーミル」から見れば、日本はアメリカによって「主権を制限された国」であり、例えば「返還された北方領土に米軍基地は置かない」といった約束を自分だけでできる国ではないのです。
さらにプーチン大統領は「実際、北方領土が返還されたら米軍基地を置く密約がある。そのことを知っている」と述べています。これは1973年に外務省が部内資料として作成し、1983年に増補された『日米地位協定の考え方』を指していると思われます。
同文書ではアメリカへの基地提供に関して「現実に提供が困難な(中略)事情が存在しない場合にも我が国が米側の提供要求に同意しないことは安保条約において想定されていないと考えるべきである」と述べています。
さらにこの一文には、「このような考え方からすれば、例えば北方領土の返還の条件として『返還後の北方領土には施設・区域を設けない』との法的義務をあらかじめ一般的に日本側が負うようなことをソ連側と約することは、安保条約・地位協定上問題があるということになる」という注がついており、ロシア側からすればまさに日本が「主権を制限された国」である証拠と見えるのです。
日米安保が領土問題を邪魔している?
しかも、安倍政権が対ロ積極外交を展開したのは、ウクライナ危機によって米ロ関係が冷戦後最悪の局面を迎えていた最中でした。こういう状況でアメリカによって「主権が制限された国」である日本がすり寄ってきたとしても、ロシアが本気で領土交渉に取り組むつもりがあったとは思われません。
むしろ、「日米安保なんか結んでいるから領土問題が解決しないのだ」というふうに話をすり替えて、日米の安全保障協力を後退させる好機と見たのではないでしょうか。
実際、プーチン大統領は2019年に開催された経済団体との非公開会合で「日本が平和条約を締結したければ日米安保を脱退する必要がある」と述べたと報じられていますし、安倍政権で国家安保局長を務めた谷内正太郎氏は、ロシア側から「日本からの外国軍隊(=在日米軍)撤退」に関する要求があったことを退任後に明らかにしています。
2019年、ウラジオストクでの東方経済フォーラムに出席した安倍首相は、「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている」と述べましたが、どうも「ウラジーミル」の目にはわれわれとかなり違った世界が見えているような気がしてなりません。
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