最近「取り残された感」覚える人が注意すべきこと 元通りに戻りゆく生活につらさを感じる人へ
その理由に触れる前に、コロナ禍と自殺者数の推移についてみていきたい。
警察庁によると、いわゆるコロナ元年にあたる2020年の自殺者数は2万1081人、2021年は2万1007人。自殺率では、2020年をコロナ前にあたる2019年と比較すると、20代以下が大きく上昇していることが明らかになっている。
「コロナ禍で自殺者が増えるのではないか、対策を考えなければならないということは、2020年の4月下旬には精神科医の間では共通認識になっていました」(張医師)
実際に増加したのは同年7月から8月にかけてで、10月には2230人と最多となった。特に女性の自殺者が激増したことは、多くのメディアが報じている。10月以降は少しずつ減少傾向にあるものの、依然として注意が必要な状態であることに変わりない。
「2020年に自殺者が増えた時期は、『内需型サービス産業』と呼ばれる飲食店、宿泊観光業が人流抑制のために大打撃を受けていました。そこで働いている人は男性より女性、正規従業員より非正規従業員のほうが多く、そういう人たちが次々と解雇されていったわけです。自殺をする背景の1つにあるのが、経済的な困窮です。生活が成り立たなくなった人たちが多く亡くなられたのではないかといわれています」
張医師はそう述べたうえで、「これに関しては、政府による給付金の支援などもあったことから、自殺者数に関してはひとまず落ち着きを取り戻している」と言う。
「断裂」が生まれた
そして今、新たな問題として浮上してくるのが冒頭にあるような「取り残された感」だ。その芽はすでに昨年からあったと張医師は振り返る。
「先ほど内需型サービス産業のケースの問題を話しましたが、一方で、コロナバブルで潤った企業、産業もあったわけです。また、コロナ禍をもろともせず夜中に飲食に興じる若者たちも少なくありませんでした。つまり、人による差、断裂が生まれた。その結果、一部の思い切り打撃を被った人たちは、その辺りから徐々に『取り残され感』を持つようになっていったのかなと感じています」
実はこの「取り残された感」は、うつの重症化や自殺行為と深く結びついていることが、過去の研究でわかっている。
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