最近「取り残された感」覚える人が注意すべきこと 元通りに戻りゆく生活につらさを感じる人へ

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自殺行動の原因にある心理状態を示すものに「絶望感」がある。この心理状態をアメリカの心理学者トマス・ジョイナーらの研究グループが分析したところ、2つの要因に集約されることがわかった。その1つが「所属感の減弱(いわゆる取り残され感)」、もう1つが「負担感の知覚(いわゆるお荷物感)」だ。

コロナ禍といった社会現象による孤独感やいじめによる心理的な負担は前者、病気を患うことなどによって生じる「周りに迷惑を掛けたくない」という気持ちは後者にあたる。

「まさに今、取り残され感を抱いている人が多いとしたら、それは注意深くみていかなければならないと考えます」と張医師は言う。

気を付けるべき2つのサイン

では、もし自分が「取り残された感」を抱いていたとしたら、あるいは家族や親しい人がそういう雰囲気をかもしだしていたら、どうしたらいいか。

「そういう人たちは、教科書的にいえば、多くは”ベクトルが内向きになって、自責的な方向”になります。ただし、なかには”ベクトルが外向きになって、他責的な方向に走る”こともあります。前者は自殺行動につながるのに対し、後者はイライラや怒りから他人を傷つけることにつながります」(張医師)

いずれにしても、気持ちがどちらかのベクトルに向く前に自分の気持ちのSOSのサインに気付いて行動を起こすことが大事になる。

SOSのサインで重要なのは、「ふだんの自分と違う状態」が「1カ月以上続く」の2つで、両者に当てはまった場合、黄色信号と考えたほうがいい。

前者では、食欲がない(食べても美味しくない、食事を楽しめない)、眠れない(寝付けない、何度も起きてしまう、悪夢が多い)、朝起きられないといった、ふだんの自分と違う生活での変化も重要なファクターになる。

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