北朝鮮がいきなり「感染大爆発」を公表した真因 すでに脆弱な状態で累計120万人が感染か

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかもこうした状況は深刻な食糧難による栄養失調や、経済制裁、新型コロナによる国境封鎖などいくつもの負の要素が重なっているところで起こっている。「多くの人はすでに身体的に脆弱だ」と、ある人道支援家は話す。「誰もが深刻な事態に陥りやすい状況にある」。

北朝鮮は2020年1月から、中国の政策を模した「ゼロコロナ政策」を行っており、厳しい国境封鎖と隔離政策によってこれまで新型コロナの発生を抑えてきたとしている。北朝鮮は中国や韓国、世界的なワクチン供給の枠組みCOVAXからの支援を断り、ワクチンを実施していない世界で数少ない国だ。

「感染抗体がなく、ワクチン接種もしていない北朝鮮の人々はウイルスに対してとてつもなく脆弱だ」と、3月に発行された戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書は指摘していた。「感染爆発が起きた場合、短期的には解決策はない」。専門家の1人は、北朝鮮での感染拡大によって約16万人が命を落とす可能性があると指摘していた。

4月に開催された大規模イベントが引き金?

今回の感染急増に対応するため、5月14日、朝鮮労働党指導部の緊急会合が開催された。北朝鮮の指導者、金正恩氏は、このパンデミックを「わが国における大激変」と呼び、広い地域、そして個別の工場や農場までも封鎖することにより感染拡大を食い止めようという戦略強化を打ち出した。

同氏は「党の役割においてさえも無能、無責任」と指摘し、この危機に直面する国民の団結力を示すよう呼びかけた。正恩氏は、海外、特に中国における感染症対策の経験を研究するよう要請したが、迅速なワクチン接種の実施においてさえ、国際的な援助を求める動きは示さなかった。

海外の専門家は、4月に平壌で開催された2つの"スーパー・スプレッダー・イベント"、すなわち、4月15日に行われた北朝鮮の創設者金日成(キム・イルソン)の生誕を祝う大規模な祝賀行事と、その10日後の大規模な軍事パレードが感染拡大に一役買った可能性を指摘している。

「あれは危険性が高かった」と、北朝鮮で支援活動を行っている人物の1人は話す。「マスクをしない人が大勢いた。平壌や、国内のほかの地域に集まった大勢の人々に対して、正恩氏らはあまりにも大きなリスクを冒した」。

次ページ季節的な食糧難の時期に重なっている
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事