「コロナ発生」を突然発表した北朝鮮のもくろみ ワクチン支援受け入れで開放姿勢へ転換も

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実はこれまで、COVAXが示したワクチン供給を北朝鮮が拒否してきた。COVAXは2022年初めにイギリスのアストラゼネカ製128万8800回分とアメリカ・ノババックス製25万2000回分を割り当てていたが、北朝鮮が受け取る意向を示さなかったので、割り当てが取り消されたのだ。

北朝鮮がこれまでワクチン支援を受け取ろうとしなかったことには、供給に関わる外国人スタッフを入国させたくなかったからとされる。加えて、「配給の不平等を嫌う北朝鮮としては、数百万回分を受け取っても、誰に受けさせるかという問題にぶつかる。選別して接種させると、新たな問題も生じる。それを嫌ったのかもしれない」と前出の三村氏は指摘する。また、コールドチェーンといった運搬インフラ、接種管理システムなどが十分に整備できないことも受け取り拒否につながった可能性がある。

外国からのワクチン支援を受け入れるか

しかし、感染者発生を公に認めた以上、北朝鮮はより科学的な防疫方法をとらなければならない。優先順位が高いのはワクチン接種となるが、外国からのワクチン支援を受け入れるかどうかが今後の焦点だ。2022年5月10日に就任した韓国の尹錫悦大統領は、すでに全面的な支援を行うことを発表し、北朝鮮にこれを受け入れるよう呼びかけた。

さらに、ウィズコロナ政策への転換をきっかけに対外的に積極姿勢を見せるかどうかが次なる注目点となる。2022年に入り、5月12日までにすでに16回発射しているミサイル開発など、安全保障上の危機や挑発を高めている北朝鮮。今回発表したコロナ感染者の存在と今後の防疫体制をどうしていくのか。そのうえで、通商面でも徐々に開放していくのか。

さらには、現在核実験の実施可能性も取り沙汰され、これまでのミサイル発射と絡め、安全保障面でどう出てくるかも予測不可能だ。北朝鮮を取り巻く情勢は、さらに不透明になってきた。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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