ちなみに、人口絡みで毎年公開される総務省の人口推計がありますが、あれは基本的に住民基本台帳ベースの数字です。一方、国勢調査は現住所ベースの数字です。
例えば、学生など実家に住民票を残したまま東京に出てくる人もいるでしょう。国勢調査はそうした人も東京の住人としてカウントするもので、人口推計も5年ごとの国勢調査の結果を基にリセットされます。
それだけではなく、国勢調査は、労働力調査や就業構造基本調査など、国のほかの基幹統計の基準にもなり、だからこそ全数回収に全力を注いでいるのです。
混乱を招く不詳率を減らす
しかし、限界はあります。前述したとおり、不詳が大都市に多いのは単身世帯の多さとも関係します。今や管理人のいないマンションも多く、隣近所に誰が住んでいるかも知らない間柄も多い。聞き取り調査をしても、年齢や配偶関係が不詳という場合も増えてきています。
事実、不詳率(年齢不詳と配偶関係不詳)は2000年時点では総人口に対して1%未満にすぎない誤差レベルでしたが、2020年には約6%、人数にして750万人超えにまで激増しているのです。
ちなみに、東京だけだと不詳率12%にもなります。不詳補完値計算で東京など大都市の数字の変化が大きいのは、大都市ならではの「地域のつながりのない」世界だからでしょう。
とはいえ、総務省の国勢調査の実査担当者としては、極力不詳を減らすべく、今はまだ3割程度しかないインターネット回収の割合を増やしたい意向だそうです。ネットの回答のほうが記入漏れもないためです。不詳が増えること自体に内心忸怩たる思いがあるのかもしれません。
不詳というものが減れば、そもそも不詳補完値というデータ自体不要のものになります。本来全数回収を是とする国勢調査の本道は、不詳補完値などという統計上の計算方式ではないはずです。
次回の2025年の国勢調査では、ネット回答率をあげて不詳をせめて2010年レベルの3%未満レベルまであげれば、また今までどおりのやり方に戻るかもしれませんし、そうなったほうがいらぬ混乱を招かずに済むことになるでしょう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら