SUV人気を牽引、ホンダ「ヴェゼル」発売1年通信簿 好調の理由とトヨタ「C-HR」との決定的な差

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先代モデルのヴェゼル(写真:本田技研工業)
先代モデルのヴェゼル(写真:本田技研工業)
競合となるトヨタC-HR(写真:トヨタ自動車)
競合となるトヨタC-HR(写真:トヨタ自動車)

前型ヴェゼルの底堅さに対し、競合として一世を風靡したC-HRは、発売から5年を経ているとはいえ、今年2月には3桁へ販売台数を落としている。C-HR独創の魅力はあるものの、身近なSUVとしてのヴェゼルの商品性は、持続性を保つ基本的価値が重視されているところに、C-HRとの個性の違いを改めて知ることができそうだ。

新型発売から1年を経て、ヴェゼルの販売動向はどうなったか。

昨年4月の発売から1年という年度集計で出された数値は5万9674台であった。12カ月で割って平均すると4972台となり、計画販売台数の5000台に近い。新車の開発では、販売計画に沿って商品性や原価がはかられたであろうから、読みどおりの推移といっていいだろう。今年3月の販売台数は5520台となっており、堅調さを表している。

ヴェゼルが安定した人気を得ている理由

では、新型ヴェゼルに手堅い人気をもたらした商品性はどこにあるのか。

ヴェゼルのリアビュー(写真:本田技研工業)
ヴェゼルのリアビュー(写真:本田技研工業)

外観は、前型に通じるクーペSUV的でありながら、車体表面の余分な線を省いた簡素な造形となり、親しみやすさが増したといえる。クルマを象徴する顔つきは、車体と同じ色を配したラジエターグリルとなり、ラジエターグリルは残しながらも車両全体にいっそうの一体感を覚えさせる取り組みが新しい。新型からハイブリッドの仕組みが2モーターを利用するe:HEVとなり、前型の1モーターによるi-DCDから変更となって、電動化を前進させることになった。

発売の昨年4月には、新任の三部敏宏が脱エンジン発言をし、2040年には販売する4輪車すべてを電気自動車(EV)にするとした。エンジンのなくなるクルマにとって、ラジエターグリルが機能的には不要になることによる顔つきをどうするか、それは商品性における重要課題の一つといえる。そこに、ホンダはこのヴェゼルから、ハイブリッド方式の電動化を強化するなかで挑戦しはじめたといえなくもない。

2022年4月25日、中国で発表された新型電気自動車(EV)「e:NS1(イーエヌエスワン)」(写真:本田技研工業)
2022年4月25日、中国で発表された新型電気自動車(EV)「e:NS1(イーエヌエスワン)」(写真:本田技研工業)

車体と同色の顔つきについて、好まない人には用品で従来どおり黒色系のグリルも選べる。だが、1年を経て多くの顧客に車体と同色のグリルは好評であるという。街ですれ違っても、すぐ新型ヴェゼルと気づく顔つきだ。余談ではあるが、つい先ごろ中国で発表されたEVの「e:NS1」は、ヴェゼルに通じる外観と、EVならではのグリルレスの顔つきであり、違和感なく上手に造形がまとめられている。そうした顔つきに適した全体像でもあるということだ。

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