「反リベラリズム」が、日本を息苦しくしている

「日本のリベラリズムの危機」を考える<3>

自民党は、格差を助長し、雇用の安定を崩壊させた新自由主義的改革について責任がある。雇用不安の影響は、2009年のリーマンショック以後の年越し派遣村に表れている。年越し派遣村は厚生労働省前の路上から始まり、職を失った派遣労働者のための炊き出しが行われた。この運動は、日本のセーフティーネットがいかに機能を失っていたかを示していた。

自民党が掲げる自己責任の原則は、国民が窮地に立たされた時、それはその個人の責任だと突っぱねることを意味していた。民主党はこの状況を、景気回復の糸口を見いだせずにいた自民党を打ち破る勝機と捉えた。

鳩山由紀夫首相は就任に際し、2006年のロードマップを見直し、普天間基地を県外に移設するという沖縄県民への選挙公約を実現することを表明した。また、日本は米国および中国と等距離の関係を築く方向へ向かうべきだという見解も鳩山氏は示した。しかし、鳩山氏の構想は失敗に終わった。

今の民主党は政党としての独自性を見いだせずにいる。政策に対する意見は分裂し、党員が表明するイデオロギーは、左派から右派まであまりにも雑多だ。どの問題に関しても統一された立場を打ち出すことが難しいことは、代表選挙における岡田克也氏の決選投票での辛勝にも見て取れる。

岡田氏は民主党の中道的な立場を表明しているが、自民党との政策上の大きな不一致はあまり見当たらない。たとえば、岡田氏は集団的自衛権については制限をすべきだと考えているようだが、第9条の再解釈には反対していない。

民主党の左派メンバーは、歴史問題に関する議論についてもっとリベラルな立場を打ち出したいと考えているように思えるが、現在の世論の下では瀬戸際に立つ同党にとって決定的ともいえる反発を呼ぶ恐れがある。

尖閣・魚釣諸島についての二国間論争においては中国の主張にも一理あるとコメントした鳩山元首相がメディアから激しく批判されたことを思い出してみるとよい。2012年安倍内閣で防衛相を務めた小野寺五典氏に至っては、鳩山氏を国賊と呼んで批判した。南京大虐殺に関する和解についての鳩山氏の言動も日本国内では評判が悪い。

民主党が進めようとしていたこと

民主党は日韓を対立させている重大懸案のひとつである慰安婦問題を解決しようと試み、これに関する協議はまとまりかけたが、2012年12月に決裂した。この合意条件の下では、金銭による賠償に加えて、在韓日本大使が存命の元慰安婦を訪問し、謝罪の手紙を届けることになっていた。

問題は、日本が植民地時代の残虐行為に対する法的責任を受け入れるか否かということだった。日本側は道義的責任を受け入れることは快諾し、償いと和解という人道上の意思表示を行ったが、法的責任を認めることは断固として拒否した。

最終段階でのこの協議決裂は双方による非難の引き金となり、裏切られたという感情を生じさせてしまった。非公式の情報によれば、日本の外交官は、協議がまとまりかけていたにもかかわらず、韓国側が法的責任を認めるよう求めるという土壇場での合意条件の変更を行ったことについて不満を漏らしていたという。

同様にオフレコでの発言だが、韓国の外交官は、法的責任を回避するために入念に計算された合意内容は、慰安婦や韓国国家の尊厳を回復するために十分な、最大限の意思表示と呼べるものではなく、この点で妥協できなかったのだと主張していた。そしてその後、安倍首相が政権に就任するとすべてが白紙にもどったのだ。日本国民は、こうした経緯も知っておく必要がある。

(構成:ピーター・エニス記者)

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