歴史修正主義はアジアの分裂をもたらす

「日本のリベラリズムの危機」を考える<2>

このような日本の現状は、多くの日本人にとって気分のいいものではなく、また、日本人の国家に対するアイデンティティにそぐわない。 そして、この文脈で考える場合、天皇の言葉は批難や警告として解釈することができる。

2015年は節目の年だ。安倍首相の修正主義的な歴史観により、彼が日本の戦争責任に関して夏に発表する予定の声明についてさまざまな憶測が飛び交っている。安倍首相は、アジア全体に大日本帝国がもたらした悲劇を過小評価し、また、それを正当化するような言動をとることによって、アジア地域の分裂を引き起こしかねない。

過去には、1995年に終戦50年決議が可決された際、安倍首相は国会を欠席しており、同年8月に発表された当時の首相による村山談話について安倍首相は不快感を示している。村山談話は、日本の戦争責任を認め、侵略による甚大な影響を広く謝罪した点で国会の終戦50年決議よりもはるかに明確な声明だった。

安倍首相は日本の植民地時代および戦時期の歴史に関する論争に与しており、2007年3月1日の国会では、日本帝国陸軍の性奴隷として若い女性や児童を動員した際の強制のレベルについて、こじつけとも言える議論を展開して韓国人の反感を買った。3月1日は、1919年の韓国で日本の植民地支配に対する独立運動が起こった日だったため、安倍首相は極めて不適切な時機にこのようなコメントを発したと言える。

2010年、韓国における日本の植民地支配開始から100年目を迎えるに際し、菅直人首相は、日本が韓国の人々の尊厳を傷つけたことを認め、反省の意を表する痛切な声明を発表したが、この際に安倍氏は、菅首相のこのコメントに憤りを露わにして不見識だと一蹴した。

安倍首相が進める「歴史への干渉」

安倍首相は2006~07年の首相就任中に、愛国心教育を推進する法律「改正教育基本法」を制定した。この法律は、他のアジア諸国と日本が共有してきた過去の歴史観に変化をもたらし、日本の若者に国家に対する誇りを育もうというものだった。また、安倍政権時の文部科学省は、1945年の沖縄戦に関する記述について、日本兵が集団自決を扇動したとする表現を削除して修正するよう教科書出版社に圧力をかけた。これに対して、沖縄の人々からは怒りに満ちた反発が起こった。沖縄での集団自決は、目撃証言に基づく事実であり、沖縄の人々のアイデンティティにかかわる歴史観の重要な要素だからだ。

安倍首相の歴史への干渉はこれにとどまらない。2014年の初めには、文部科学省が教科書出版社に対し、議論の分かれる歴史問題については政府の見解または最高裁判所の判例に倣うよう促すガイドラインを発表した。また、同年末には在ニューヨーク日本領事館を通じて、日本政府が不正確だと考える慰安婦に関する教科書の記述を修正するようマグロウヒル(McGraw Hill )に要求した。マグロウヒルはこの要求を拒絶し、根拠を提示して、同社の記述には、それを裏付ける学術的なコンセンサスが得られており、日本政府が教科書の内容について要求すべきではないと主張した。

慰安婦問題や米慰安婦像の設置に関して安倍首相が抱える問題は、不誠実にも事実を無視したことによる自業自得の損害だ。1993年の河野談話は、慰安婦のシステムに対する国家責任についての日本の集団的記憶喪失とも言える時代の終了を象徴するものであり、これによって日本の評価は大いに改善された。それにもかかわらず、安倍首相は繰り返し河野談話に対する工作活動を行って日本の国際的な地位を著しく損ない、自らの思慮分別に対する疑問の声を招いているのだ。

2007年の米国下院決議(H. Res. 121)は、慰安婦に関する安倍首相の所見を批難する決議だったが、この決議は吉田証言に基づくものでも、朝日新聞の報告に基づくものでもなかった。H. Res. 121は、長年にわたって蓄積された、慰安婦システムへの日本軍と日本政府の関与を示唆する膨大な証拠資料に基づいていたのだ。

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