日中間の問題の7割は誤解、理解不足に基づく--『これから、中国とどう付き合うか』を書いた宮本雄二氏(前駐中国大使)に聞く


──中国からの旅行者が減りました。

中国の親しい友人が訪ねてきたので、尖閣の問題はひどい結果をもたらしていると話したら、驚いていた。中国人は自分の国の主権を守る立場から当然のことをやっている。むしろ日本が中国を軽く見て、尖閣の領有を強化するための手を打ってきた。将来に禍根を残さないため毅然とやらないといけないというような言い分だった。まさに誤解と理解不足の実例になってしまった。

──日中間は歴史問題を抱えています。

45年の終戦から66年経ったが、日本の中国侵略の時代を体験した人が現存している。若い人も祖父母あるいは両親から直接に体験を聞かされ、ファミリーストーリーになっているほどまだ生々しい。愛国心教育があったから対日感情が悪くなったという指摘は一面の真理にすぎない。愛国心教育をする素地が中国社会にあるので、歴史的に日本に対する厳しい見方は、中国社会に当分残っていくだろう。

これも先ほどのアトランタでの経験と重なる。140年近く前の南北戦争の話をアメリカ南部の人は忘れていない。口承で伝えていく。南北戦争での死者は第2次大戦でのアメリカ人の死者より多かったという。

──歴史問題はどうすべきなのでしょうか。

そう簡単に消えないだろうが、時を待つしかない。今や、66年から10年近くにわたって続いた文化大革命を知らない世代が人口の5割を超えた。今はまだ被害者意識が強すぎるが、中国も徐々に変わっている。ましてや経済の発展で心に余裕が出てくれば、とりわけ若い世代は自信を持った民族として登場してくるだろう。そうなると、歴史問題にも心広く対応できるようになる。確実にそちらの方向に向かっている。

今も中国共産党や政府自体は、歴史問題を中国側から外交的な問題として扱う気はない。日本であるいは日本関連で何か起こると、それに対して対応せざるをえないが、それも日中関係を壊すためにではない。国内的考慮から対応する。

日本は、3年近く前に「戦略的互恵関係」を結んだことで、重要なハードルを越えている。指導者が先に進んで、一般国民はまだそこまで行っていないから、歴史問題が起こると強く反発する。くれぐれも注意していくことは必要だが、歴史問題は日中関係で脇に置くことができる課題になっていくだろう。日本があと5~10年うまくやっていければ。

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