伊豆急、JR通勤車を「ハワイアン」に改造した狙い 元京浜東北線209系「第3の人生」はリゾートで

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もう1つ気になるのは、なぜ通勤型車両で海側赤・山側青の「リゾート21」カラーに回帰したのかという点だ。209系は通勤型車両なのだから、それらしいデザインでもよかったのではないかとも思ってしまう。

車両ラッピング中の様子(写真:伊豆急行提供)

この点については、「当初は8000系のようなラインカラーや無塗装での運行も検討しましたが、通勤電車のイメージが残ってしまいます。観光路線を走るにあたり、お客様に少しでも非日常を味わってもらえるデザインにしようと、ラッピングデザインを再考しました」(関谷氏)との答えだ。ドアの車内側に施されたラッピングも、ハワイに劣らず美しい伊豆の海をアピールするべく行ったとのことだ。

つまり、電車の形としては一般車両だが、その外観・内装にアロハデザインを盛り込むことで、観光向けと通勤通学向けのテイストを両立させたといえよう。改造や運転などのコスト面と、一般型車両としての輸送力の高さに、開業60周年にあたるデザインコンセプトが合わさった結果、209系は3000系「アロハ電車」として観光路線に再デビューすることになった、といえるだろう。

今後の車両導入はどうなるか

一方、「アロハ電車」の導入により、従来車は8000系2編成(計6両)が引退。今後も伊豆急は、経年が進んだ8000系の置き換えを順次進める計画という。独自デザインである「リゾート21」の今後を考えると、自社オリジナルの車両を導入するかが気になるところだ。

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同社は「他社からの譲渡車両を検討しており、現時点では新造車両の構想はありませんが、ご利用のお客様に安心と非日常感を味わってもらえるような車両を導入したいと思います」と説明する。今後車両の置き換えが進むとしても譲渡車両が中心になるようだが、「アロハ電車」という例ができたことで、一般型車両を観光向けのデザインで装飾するという期待は高まる。

令和の現代、伊豆の地で元東急8000系(伊豆急8000系)と、元JR209系(3000系)が並ぶだけでなく、2車種が同じ線路の上を走ることになるとは、根岸線沿線で生まれ育った筆者はまったく想像していなかった。伊豆高原駅で両車が並んだ様子を見て「ここはかつての桜木町駅か?」と思ったほどだ。平成生まれの通勤電車は、観光車両として伊豆でどのように受け入れられるだろうか。

若林 健矢 フリー鉄道ライター

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Kenya Wakabayashi

1995年生まれ、神奈川県横浜市出身。國學院大學文学部卒業。2018年からライター活動を始め、独学で取材の経験を積み重ねながら記事執筆を行っている。「乗り鉄」として体感で鉄道を楽しみ、その魅力を発信すべく、取材・撮影の両方に励む。また、小規模ながら鉄道模型も扱う。

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