林原のはがれたメッキ、ウソの上塗り30年

拡大
縮小
林原のはがれたメッキ、ウソの上塗り30年

異例の倒産劇だった。1月25日、私的整理の一種である事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)が受理された岡山のバイオ企業、林原(はやしばら)。が、わずか1週間後の2月2日の債権者集会でADRでの再建を断念し、会社更生法適用への切り替えを表明した。

今回、会社更生法を申請した中核3社は、売上高が702億円で負債総額が1318億円。債務超過は500億円以上に上る。

1961年に急逝した父の跡を継ぎ、19歳で就任した林原健・前社長(69=写真)。経営方針は「利益の7割を不動産、3割を研究開発に投資する」というもの。不動産からの安定収入で、大企業にはできない10~20年の長期戦略の研究開発に経営資源を投下し、オンリーワンの製品を作り出すという異色の経営手法だ。

実際、がん治療薬「インターフェロン」や人工甘味料に用いられる「トレハロース」など、世界的な製品を世に送り出してきた。戦前からの水あめ事業の利益で買い集めた不動産は膨大で、中国銀行の10%強の株を持つ筆頭株主でもある。

今回の経営破綻の発端は、昨年11月にさかのぼる。メインバンクの中国銀行が資金繰りの厳しさを注視し、さらなる融資には経営の詳細を知りたい、と林原に説明を求めた。3~4年前から、メガバンク3行は監査の不透明性から、融資を軒並み減額。一方、中国銀行の融資額は、4年で330億円から447億円(昨年12月末)まで膨れ上がっていた。

林原は中国銀行との話し合いの中で約30年前からの不正会計を明かしている。その間の架空の売掛金は300億円で、200億円の簿外債務も発覚した。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT