日産の「自動運転中の事故を回避」超絶技の意味 不運重なる複雑なシーンも瞬時に認知して避ける

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そして最後のデモが、正確な周辺計測により自車両の進路と移動量の微小な変化を検出可能という「Dynamic SLAM」。ホテルのエントランスを模した狭い通路に入っていくと、車両は正確に周囲の壁などとの距離を推し量りながら、正面入口を模した場所までたどり着く。レーダーだけでは正面入口がどこか知ることは難しいし、カメラだけでは狭い通路の中で自車位置、壁などとの距離を正確に判断できない。カメラは2Dの映像から3Dの状況を推定するものであり、時間がかかるし、歪みなども生じるというわけだ。

おそらく地図データがそれなりに充実してくる将来においても、ホテルのエントランスから玄関までのアプローチのような場所まで、しっかり整備されるという状況はなかなか訪れないだろう。そういう場面でも、安心して使える自動運転を可能にするのがこの技術ということになる。

レベル3でも緊急回避までクルマの側が安全に行う

自動運転レベル2からレベル3へのステップは非常に大きい。ホンダは世界で初めてそれを実装してみせたが、レベル3走行時であっても緊急回避はドライバーに委ねられていたのも事実。しかし、それをクリアして、つまり緊急回避までクルマの側が安全に行うようにしなければ、安心して使える自動運転にはならないと言われれば、たしかにそう。ましてレベル4、レベル5という話はできないというのが、日産が今回発表した「Ground truth perception技術」に込められた主張と言えるだろう。

空間や舞台を限定することなく、もちろんシチュエーションにも縛りの無い本当のレベル3自動運転を目指す。もちろん、その先のレベル4、レベル5も…。今回の発表は、まさに日産のそうした決意表明だと見ることができそうだ。

今回のデモの詳しい様子は動画も添えておくので時間のある方はぜひご覧いただきたい。(外部配信先では動画や画像などを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でご覧ください)

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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