上野駅公園口、歩行者動線「新駅舎」で大幅改善 「鉄道」「地形」どちらのファンにも見どころ多数

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上野が初めてという鉄道には、モノレールもある。2019年10月末限りで休止となってしまった、東京都交通局の上野懸垂線、通称「上野動物園モノレール」だ。開業は1957年。わずか330mあまりの距離であったが、常設されて営業したモノレールとしては、ここが日本初である。

上野動物園内のモノレール=2019年(筆者撮影)

東京都は、都電を置き換える交通手段の一つにモノレールを考えており、これはもともと、研究開発のためのモデル線として建設されたものだ。最終的にモノレールは採用されず、都電の代替は地下鉄と都バスで行われたが、当時の都の模索を表していた存在であった。

上野動物園モノレールは老朽化が著しくなって休止のやむなきに至ったものの、長年にわたって親しまれてきただけに惜しむ声は大きかった。そのため、2022年になって後継となる交通機関が具体的に検討されているとの報道も流れたが、今後の復活はあるのだろうか。小さいながらも注目される存在だ。

見逃せない「廃止駅」

上野公園のすぐ側には廃止駅もある。京成電鉄の博物館動物園駅で、1933年の日暮里―上野間の延伸時に開業。1997年に休止となり、2004年には正式に廃止された。

旧京成博物館動物園駅駅舎(筆者撮影)
京成上野駅はJRの駅とは少し離れている(筆者撮影)

この京成の新線は、「恩賜公園」内であるから地下線とするのは絶対条件として、戦前のことゆえ、園内の樹木や、寛永寺などの建築物の基礎を傷めないことなど、厳しい条件が宮内庁から課せられた。

京成上野駅(開業当時は上野公園駅)も地下構造。駅舎は中央通りの向かい側の現在、ヨドバシカメラが立つ位置、つまりは上野公園外に設け、地下道で結んでいたほどだ。

博物館動物園駅の設置も駅舎を景観にふさわしいものとする条件で認められた。そのため、国会議事堂にも相通じる重厚な外観の西洋式駅舎が造られ、それが現存している。内部はほぼ廃止時のまま保たれており、時折、イベント会場となって公開されるが、駅舎の外観だけでも一見の価値があるだろう。

鉄道好きとしては、こうした鉄道遺産、ゆかりの地がまとまっている地域を巡ってみると面白いだろう。博物館動物園駅跡は東京国立博物館、東京都美術館、東京芸術大学美術館などに囲まれた、交差点の一角にある。上野駅公園口を起点にした散歩の目的地とするにはちょうどいい。

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土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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