「子どものコロナワクチン接種」でわかってきた事 子どもより大人の3回目接種を優先させるべき

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さらに、もう1つ大事なことは、ワクチン接種の効果です。

5~11歳児に対しては、ファイザー製ワクチンの場合、通常の3分の1量を2回接種することになっていますが、アメリカの臨床試験(Walter E. B. et al., New Engl J Med, 386(1):35, 2022.)の結果では、オミクロンが流行する前の段階では感染予防に関するワクチン有効率が約90%でした。

オミクロンの流行後は有効率が低下

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ところが、オミクロンが流行してからは有効率が大きく下がっているようで、2月末に投稿された査読前論文では、20%を切ると報告されています(Dorabawila V et al, medRxiv)。

つまり、一度できた免疫が急に下がってくるということで、これはおそらく接種量を3分の1に減らしているためだと思われます。そうなると、今後は接種量を調整する必要があるとともに、大人と同様に追加接種が必要になるということになります。

いずれにせよ5~11歳児へのワクチン接種には、もう少し情報が必要だと思われます。

宮坂 昌之 大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授

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みやさか まさゆき / Masayuki Miyasaka

医学博士・PhD。1947年長野県生まれ。京都大学医学部卒業、オーストラリア国立大学大学院博士課程修了。金沢医科大学血液免疫内科、スイス・バーゼル免疫学研究所、東京都臨床医学総合研究所を経て、大阪大学医学部教授、同・医学研究科教授を歴任。2007年~2008年日本免疫学会会長。著書に『分子生物学・免疫学キーワード辞典』(医学書院、共著)、『標準免疫学』(医学書院、共著)、『免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何か』(講談社ブルーバックス、共著)、『新型コロナワクチン 本当の「真実」』、『新型コロナの不安に答える 』(講談社現代新書)など。

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