「カムカム」で注目、岡山学生服がシェア7割の訳 原宿にショップ、オーディションでモデル選出

拡大
縮小

矢野経済研究所の調べによると、2020年度のユニフォーム市場規模(メーカー出荷金額ベース)は約5000億円。そのうち「スクール」のシェアは22.4%。つまり学生服の市場規模はおよそ1100億円といったところだ。

同研究所の分析によると、オフィスユニフォームやサービス系のユニフォームがコロナ禍の影響で需要減となったのに対し、学生服市場はブレザータイプやジェンダーレスタイプへのモデルチェンジを行った学校が多く、需要はプラスに転じたという。

今後はどうなるだろうか。中長期的には少子化の影響は避けられないだろう。文部科学省の学校基本調査によると2021年度の中学生の総数は約323万人。高校生は約300万人。一方、18歳人口は2018年の118万人が、今から10年後の2032年には98万人へと20万人も減少すると見られている。生徒数も相当縮小することは間違いない。

日本市場は縮小の一方、世界は拡大

一方、目を世界に向けると、「(世界の)学生服市場、2028年には589億569万ドルに」というレポートがあった(市場調査会社のグローバルインフォメーション(川崎市)調べ)。2021年の学生服の市場規模は385億ドルで、7年後には約1.5倍に拡大するというのだ。その背景にはアジア太平洋地域のパキスタン、インド、バングラディシュなどの国々での需要増加などがあるという。

縮小する日本市場と拡大する世界市場。大手メーカーは海外展開についてどう考えているのだろうか。具体的なアクションを起こしているのは1社のみだった。

「海外市場としては中国でのJKファッションとして主に大学生をターゲットに販売しています」(トンボ事業開発推進部)

販売エリア、数量などは「オープンにしていない」(同)とのことだった。

他社は「具体的なプランはございません。少子化とはいえ、中学校を中心に詰襟・セーラー服がブレザー化へ移行しているなど、学生服の見直しが活発で、現時点では国内で成すべき役割をしっかりと行っていくべきではないかという方針でございます」(明石スクールユニフォームカンパニー)、「海外展開の予定はありません」(菅公学生服)と、海外展開は視野に入っていないようだ。

今後、少子化が進む中で、学校による生徒争奪戦が激しくなり、学校のブランドイメージアップや、他校との差別化のために制服の見直しや高級化が活発化する可能性は高い。学校制服の国内市場は、当面はそういった需要増で規模を維持できるのだろう。しかし、全体のパイは確実に縮小していく。そのときを見据えた動きが、今後どんな形で出てくるのだろうか。10年後、20年後の学校制服を取り巻く環境は一変しているかもしれない。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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