新境地に立つ旭ダイヤモンド工業、金脈は太陽電池市場
普及を後押しした専用機と価格見直し
ダイヤモンドを工具に付着させる技術、それ自体は珍しくない。身近なところでいえば、女性がつめの手入れに使うやすりや、歯の治療で使用される電動ドリルもダイヤ工具の一種だ。ワイヤの場合も、数メートル単位での製造はそれほど難しくないという。
だが工業製品として実用化するには、何百キロメートルものワイヤにダイヤを均一に取り付ける量産技術が必要だ。「メートルとキロメートルでは3ケタ違う。少々の生産技術の変化では、土台無理な話だった」(川嶋社長)。
光明が見え始めたのが05年ごろ。ダイヤモンドとメッキの複合によるある製造方法を試したところ、「ひょっとしたらいけるかもしれないな、というところにぶつかった」(川嶋社長)。さらなる研究を重ね、07年に製品化。環境負荷軽減の意味を込めた「エコ」を製品名に冠し、市場に投入した。
やっとの思いで販売にこぎ着けた新製品。だが普及に向けてはさらなる課題の克服が必要だった。
一つ目が使用環境の改善だ。通常の鋼鉄線を針金に例えるなら、表面にダイヤモンドを付着させたエコメップは細い有刺鉄線のようなもの。既存のウエハ製造設備に装着しても、十分な性能を発揮できない。
普及が進んだのは、「機械メーカーさんの力があったから」(川嶋社長)。エコメップ発売を契機に機械メーカー数社が専用機の開発に着手。専用機の導入で「性能の差が評価されるようになった」(堀江常務)。
二つ目が価格の見直しだ。旭ダイヤは10年11月、「従来工法からの切り替えを促すため」エコメップの価格引き下げを発表。これにより「明らかに普及のスピードが上がった」(川嶋社長)のだ。