ウクライナ「脱出最前線」、国境駅と列車の緊張感 ロシア・欧州間の国際列車は消滅、車両「没収」も
2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻。各地の都市が攻撃を受け、多くの市民らが危険を逃れるため被害の少ない都市や外国へ避難を余儀なくされている。
こうした避難民を運ぶ足として、鉄道が大きな役割を果たしていることは言うまでもない。攻撃の危険がある中、23万人以上を数える国営ウクライナ鉄道(UZ)の職員たちは、そのほとんどが国にとどまり、安全な地を求める人々を運ぶために尽力しているという。
親ロシア派勢力が強い、あるいはロシア軍が優勢なウクライナ東部地域では列車が運行できなくなっているものの、首都キーウ(キエフ)や北部のハルキウ(ハリコフ)などの都市を結ぶ列車は維持されている。空襲警報での立ち往生や駅での救援物資積み下ろしに時間がかかるため、ほぼすべての列車が遅延しているものの、基本的には時刻表に掲載している長距離列車は運行できているという。
運行維持で「危険から逃れられる」
37歳の若さながらウクライナ鉄道の最高経営責任者(CEO)を務めるオレクサンドル・カムイシン氏は、英紙ガーディアンのインタビューで「開戦以降、亡くなった職員は64人、負傷者は71人」と説明。鉄道施設も攻撃を受けているが、「線路が壊れたら、われわれはそこを修理する。職員たちを危険にさらしていることは理解しているが、運行を維持することで何千人もの人々が危険から逃れることができる」との姿勢を示す。同CEOを含む総勢7人の幹部は開戦以来、列車を使った「移動運行司令室」を設けて対応している。
カムイシンCEOによると、避難民発生のピーク時には1日20万人が鉄道で西へと移動したという。こうした人々をすべて無料で列車に乗せ、開戦から2週間で200万人以上の人々を逃すことができたとしている。
このほど発行された、英国で編纂されている鉄道時刻表「ヨーロピアン・タイムテーブル」の最新版ではウクライナ危機下における運行事情がアップデートされ、現地の緊張具合がページの上からも伝わってくる。人々はどのようなルートで国外へ脱出し、身の安全を得ようとしているのだろうか。
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