ウクライナ「脱出最前線」、国境駅と列車の緊張感 ロシア・欧州間の国際列車は消滅、車両「没収」も

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ウクライナからの脱出先となっている国は、北から順番にポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、モルドバの5カ国がある。ロシア、ベラルーシとは長い国境で接しているが、わざわざ「敵国」に逃げる人は多くないと考えられる。

脱出経路として最も多くの避難民が通るのは、ウクライナ西部のリビウ(Lviv)からポーランド東部のプシェミシル(Przemysl)に抜けるルートだろう。リビウ―プシェミシル間の距離は98km、所要時間は3時間弱だ。

筆者は4月上旬、多くの避難民が連日到着するプシェミシル駅を訪問する機会を得た。プシェミシルに最も近い空の玄関、ジェシュフ(Rzeszow)空港へ飛び、そこから国内列車を利用した。同空港はNATO軍の前線基地として使われており、バイデン米大統領も当地を訪れた。滑走路脇には何基もの地対空ミサイルが並ぶほか、アメリカやイギリスなどの軍用輸送機が頻繁に離着陸する。

日本人ボランティアの姿も

ロシア軍が攻撃を東部に絞ったことが影響しているのか、「4月に入ってからはポーランド入りする人々の数も一気に減少した」とボランティアらは話す。駅のホームで出会ったボランティア志望の日本人男性も「プシェミシルに1週間いたが、だんだん手伝えることがなくなってきた」とし、「(同駅から15km離れた)国境の街・メディナに行ってやれることを探してみる」と話していた。

プシェミシル駅には日本人男性ボランティアの姿も。ウクライナとポーランドの国旗、そして日の丸を描いたプレートを帽子に付けていた(筆者撮影)

それでもプシェミシル駅のコンコースに入ると、大きな荷物を持って移動する人々が目に入ってきた。駅構内にいた避難民と思われる人々は200人ほどで、その日にウクライナ南部オデーサ(オデッサ)から到着した列車で脱出してきたという。18~60歳の男性は出国できないため、多数を占めるのは子ども連れや単独行動の女性だ。プラットホームでは避難民に食事や生活必需品を配布するテントが置かれ、無料で飲食したり、当面必要な雑貨類を手にしたりすることができる。

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