ウクライナ「脱出最前線」、国境駅と列車の緊張感 ロシア・欧州間の国際列車は消滅、車両「没収」も

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駅に張り出された時刻表によると、ウクライナからはキーウ発の列車が1日に2本あるほか、オデーサから1本、リビウから1本が運行されていることになっている。筆者が訪れた際には、オデーサからリビウ経由で到着した青いUZの客車列車が停まっていた。

ただ、これらがすべて毎日運行しているわけではないようだ。筆者訪問時には、昼間に2本あるはずのキーウからの列車が到着した形跡はなかった。一方で、時刻表に記載がない国境のウクライナ側の駅・モスティスカ(Mostyska)に向かう区間列車が1本走るとの予定が掲げられていた。ウクライナとポーランドとは軌間が異なるため、モスティスカでの台車交換が行われている。

駅では黄色のビブスを着たボランティアが避難民をサポートする(筆者撮影)

駅のきっぷうりばでは、揃いのビブスを着たボランティアたちが、避難民に列車やバスのチケットを取るためのサポートを行っていた。ウクライナからの避難民は目下、2等車であれば欧州内の多くの国で無料乗車が認められている。一時期のようにとにかく乗れるだけ乗せて……という状況からは大幅に緩和され、一般乗客と同じ車両に指定券通り着席して目的地に向かっていた。

プシェミシル駅では、ウクライナから到着した避難民たちがその日のうちに次の街へ向かうためのサポートがしっかりとできている。そのため、駅から外へ出る避難民らの姿はなかった。駅から一歩出ると穏やかな地方都市の雰囲気で、混乱らしい混乱はまったく見られなかった。

ただ、ポーランドの大都市には依然として多数の避難民が身を寄せている。例えば、ポーランド第2の都市・クラクフ(Krakow)には15万人もの避難民が滞在中で、この数は同市のもともとの人口の20%を超えている。ほかの街でもこれに近い事態が起こっており、滞在の長期化による住宅や職場の確保、子どもたちの就学先の準備などといった課題が新たに持ち上がってきている。

ロシアと「西側」結ぶ列車は全滅

一方、侵攻により西側諸国から厳しい制裁にさらされているロシアは、英国やEU諸国によるロシア機の上空通過禁止措置により、同国を発着する国際線フライトが極めて限定的となっている。鉄道界でも3月上旬、国際鉄道連合(UIC)がロシア鉄道(RZD)とベラルーシ鉄道(BC)の締め出しを決めた。

これらの事情により、ロシア国民にとって外国訪問は非常に難しい状況となっている。ロシアのサンクトペテルブルクと陸続きのフィンランドの首都・ヘルシンキとの間を走る国際列車「アレグロ」は、そんな中で「脱走」を求めるロシア人が使える唯一の西側への足として使われてきた。だが、フィンランド政府はロシアからの自国民の脱出が一通り終わったことや制裁の意図から、3月27日をもって同列車の運行を打ち切った。

冷戦時代の事情を知らないフィンランドの女子学生は「列車に乗れば友達といつでもロシアに遊びに行けると思っていたのに、なくなってしまうのは残念」と惜しむ一方、スウェーデンに住むロシア人男性は「今まではいつでもロシアに帰れたのに、次回はいつ帰れるのか見通しが立たない。すでに欧州からのロシア行きのフライトは飛んでいないし……」と現状を嘆く。

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