今年2月の時点で実写邦画の歴代興行収入第1位(邦画全体でも第6位)である『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年公開)は、刑事ドラマ「踊る大捜査線」の劇場版2作目で、警察機構内の利害対立が1つのテーマとして描かれている。
架空の警察署「湾岸署」管内で発生した事件の捜査本部長として、本庁から沖田警視正が着任。厳格な命令統制で指揮を執るが、現場の署員は思うように動けない状況を強いられ、いら立ちを募らせる。捜査は後手に回り、沖田と湾岸署員が衝突。その後、捜査本部長が室井警視正に交代すると、室井は沖田とは対照的に自分の判断で動くよう署員に指示する。自発的に捜査に取り組む捜査員たちによって事態は好転していく。
要は、上司に抑圧された部下の士気が下がる一方、部下の自発性に任せると意欲的に働くことになる、ということだ。「現代社会のリアル」と題された連載でフィクションを語るのは少々気が引けるが、この話に納得する人、同じような経験をしたことのある人は少なくないだろう。
では、部下にすべからく裁量を与えるべきかというと、そんな単純な話でもない。多くの組織には「指示をする人(上司)」と「指示を受ける人(部下)」という階層の関係性が存在し、上司は部下を指示に従わせる権限を持つ。警察機構のような予定どおりの計画遂行が重視される組織では、部下に裁量を与えることは指示から外れた行動を誘発し、致命的な失敗を引き起こすものと見なされる。
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