米国「壮大な実験」に学ぶ、排出権取引制度の教訓 うまく機能するかは制度設計とデータ公開次第

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カーボンプライシングと一口に言っても、その実行方法はさまざまだ。現在の日本では、排出権取引・環境税を両にらみしつつ検討が進んでいる(撮影:吉野純治)

時計の針は止まらない。二酸化炭素がもたらす気候変動の脅威は、ゆっくりと、しかし着実に増している。国内・国外を問わず大きく注目されている気候変動問題は、ポストコロナにおける中心政策課題の1つといえよう。

しかし、二酸化炭素(CO2)排出を減らそうと合意できたとしても、具体的な実現に向けては大きな壁がある。CO2排出に対する罰則がない限り、「ほかの人(企業・国)が減らせばいい」というフリーライドが生じるからだ。そこで出てくるのが、カーボンプライシングと呼ばれる、CO2排出の削減に金銭的インセンティブを与える環境規制だ。

カーボンプライシングと一口に言っても、その実行方法はさまざまだ。経済学においては、「排出権取引」と「環境税」という2手段が提案され、環境規制の実務に用いられてきた。現在の日本では、排出権取引・環境税を両にらみしつつ、検討が進んでいる。

本稿では、排出権取引制度の代表例として知られる、1990年代の米国で導入された二酸化硫黄(SO2)規制、「酸性雨プログラム」を紹介したい。併せて、筆者が同プログラムを題材として行った、規制のデザインに関する実証研究も簡単に紹介する。

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