新幹線"開業前倒し"は日本に何をもたらすか 北海道は5年、北陸は3年の延伸前倒しが内定

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採算面で苦戦必至の函館―小樽間について、道や沿線自治体が出資する第3セクターが運営を担うのか、あるいはほかの方法を模索するのか。その決断を下すのは、たやすいことではないだろう。

次の俎上は敦賀―大阪間の開業

札幌延伸後は函館ー小樽間は並行在来線として経営分離される

北海道、北陸、九州の3つの整備新幹線が開業した後には、どのような展開が予想されるのか。

まず議論されるのは、北陸新幹線で未整備の敦賀―大阪間の行方である。そもそもルートがまだ決まっていない。

敦賀―米原を新線建設し、米原から東海道新幹線で新大阪へ乗り入れる米原ルート、敦賀から小浜市付近を通り大阪に向かう全区間を新線建設する若狭ルート、在来線にも乗り入れ可能なフリーゲージトレインを活用して在来線の湖西線に乗り入れて大阪に向かう湖西ルートの3案がある。

東海道新幹線を活用する米原ルートは新線建設区間が少ないものの、JR東海が乗り入れに消極的とみられる。新線建設区間が長く、時間短縮効果が最も高い若狭ルートは、3ルートのうち建設費が最も高額となる。在来線を使う湖西ルートはコストこそ格段に安いが、時間短縮効果が小さい。3ルートそれぞれに一長一短がある。

現在、JR西日本と鉄道・運輸機構は湖西線乗り入れ用のフリーゲージトレインの開発に着手しており、湖西ルートが実現に向けて一歩リードしている。とはいえ、今後どうなるかは予断を許さない。

整備新幹線計画が完了した後は、新幹線は打ち止めになるのだろうか。四国、山陰、東九州など、新幹線を熱望している地域は少なくない。今回の前倒し決定によって、「次の整備新幹線」を見据えた動きが各地で活発になることは間違いない。財源が限られる中で、どう折り合いをつけていくのか。難しい判断を求められそうだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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