韓国人が「政治素人」の新大統領を選んだ理由 国民が望んだ「政権交代」、対日関係に変化も

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韓国の新大統領に選ばれた前検事総長の尹錫悦氏。今後の政権運営や対日関係はどのように変化するのか。静岡県立大学の小針進教授に聞いた。

韓国大統領選で勝利し、記者会見を行う尹錫悦・前検事総長(韓国・ソウル、写真:AFP=時事)

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3月9日に行われた韓国大統領選挙で、最大野党「国民の力」候補の尹錫悦氏が、与党「共に民主党」候補の李在明候補との接戦を制し、勝利を得た。
尹氏は検察総長を務めた一方で、政治経験はまったくなく、歴代大統領の中でも異例中の異例の人物だ。韓国の有権者は市長、知事などの政治経験が豊富な李氏ではなく、尹氏をなぜ選んだのか。
今後5年間の尹氏の政治運営や対日関係について、朝鮮半島問題などに詳しい静岡県立大学国際関係学部の小針進教授に聞いた。

スキャンダル暴露の選挙戦

――得票率で1%未満の差での決着。これほどまでの接戦は、何を意味しますか。

勝利した尹錫悦候補の得票率は48.6%、李在明候補は47.8%。ここから2つのことが読み取れる。

1つは、有権者が真っ二つになったということ。韓国社会の「分断」がそれだけ深化してしまった証拠だとも言える。理念やジェンダー(性)、世代間での分断状況が強まったのではないか。

もう1つは、政権交代を望むも独走はさせないという、有権者全体の絶妙な審判の結果なのだと思う。

韓国の大統領は歴代、任期が近づくにつれて支持率が下がり、レームダックになりがちだった。ところが、文在寅大統領に対する支持率は、選挙直前の3月2日時点での世論調査で43.5%と高かった。にもかかわらず野党候補が当選したということは、政権交代を望む声のほうがわずかに多かったことを意味する。

1987年の民主化以降、保守政権と進歩(革新)政権が10年おきに交代する「政権交代10年周期説」がこれで崩れた。僅差であっても、5年前に保守から奪還した政権を文大統領は同じ進歩勢力へ引き継ぐことに失敗した。

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