スクープ!これが北朝鮮「5.30談話」だ

現場の自主性発揮を求める政策の全貌

その一方で、朝鮮労働党の指導が前提であることも記されており、あくまでも「社会主義的経済運営」に基づいた「われわれ式経済管理」を強調している。文書の中では、「経済事業に対する党的指導はあくまでも集団的指導であり、政治的指導」、あるいは「すべての党組織は、すべての活動において後方事業は今日の『社会主義守護戦』だとした党の意図と要求を徹底的に具現しなければならない」と、現場の行きすぎた運営にクギを刺している。

また、「経済指導幹部はもちろん、すべての幹部が、苦難の行軍の時期から今日に至るまで国の経済問題と人民生活問題を解決できずにいる現実の前で自ら深く反省すべき」と指摘し、経済状況のいち早い改善を強く促している点が目に付く。

文書は幹部向けの要約版か

この文書を読んだ北朝鮮経済の専門家らは、「A4用紙4枚というのは、あまりにも短い。分量はまだあるのではないか」「表記されているハングルの表記や綴り方が、北朝鮮で正式文書とされるものではなく、中国の朝鮮族などが写して書いたものではないか」との疑問を呈す。

韓国・国民大学の鄭昌鉉教授は、この文書について「分量が少ないのは気になる」としながら、「5.30談話については、北朝鮮の体制や政策に対してかなり過激な内容が含まれていると聞いている。敏感な内容が多く、まだ全文は公開できないのではないか」とし、この文書で書かれている内容の信憑性については肯定する。

おそらく今回入手した文書は、「5.30談話」(労作)との表記もなされていることから、全文ではなく、内部向けの要約であるようだ。鄭教授は「談話の内容が敏感なものがあるものの、労働党としてはこの談話にある指示内容を伝えないといけない。そのため、幹部用、あるいは実務者の学習用として主な内容だけを要約する形で4ページのものにしたのではないか」と指摘する。学習会や講習会などの実際の現場では、5.30談話の詳細な内容が口頭などで行われることも考えられるようだ。

金正恩政権が本格化して以降、北朝鮮の経済政策としてさまざまな措置や方針が出されたと、世界の北朝鮮ウォッチャーが指摘してきた。2012年には「6.28方針」というものが出されたとされ、この方針では「われわれ式の経済管理方法」の方向性を提示し、協同農場での収穫物の分配方法の変更や工場・企業所などでの独自権限の拡大が示されたとされた。12年には「12.1措置」というのも出され、企業所での独立採算制の導入などを指示したという報道も流れた。

2013年には「3.1措置」がなされたという報道も相次いだ。これは、外貨口座の開設や変動為替制の適用といった内容で、その後、14年になって「5.30措置」「5.30談話」というのが出され、北朝鮮全国の工場や企業所などに全面的な自律経営権を付与、生産や分配の方法、貿易をする権限までも与えられたと説明されてきた。

次ページ以降、「5.30労作」の原文と日本語訳を掲載する。

次ページ今回入手した「5.30談話」の全文
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