専門家たちのチームを率いて、案件を成功に導く。
「絶対に社長と村上さんを会わせてはダメです」。2019年末、あるフィナンシャルアドバイザー(FA)はそう忠告した。
忠告の相手は、20年に村上世彰氏が関与するファンドから敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けられた東芝機械(現芝浦機械)だ。
話はTOBの少し前にさかのぼる。村上氏は19年末から東芝機械の株式保有比率を徐々に上げていた。そうした中、村上氏から東芝機械に一本の電話が入る。
「一度、話を聞いてほしい」。村上氏は当時の社長を指名し、面会を求めてきたのだ。
このとき、東芝機械側は関係のある証券会社などに意見を聞いて回った。もらったアドバイスの多くは「どうぞ、会ってください」というもの。当時、経営陣もそれほどの危機感は抱いていなかったこともあり、面会をセッティングする方向で動いていた。
ところが冒頭のFAだけは違った。過去に村上氏が絡む案件を何度も経験しており、その戦略を熟知していたのだ。「雑談するからというニュアンスで社長に会わせろと言ってくるのが村上さんの常套手段。会って、相づちを打っただけで、後々『賛同した』と言ってくるのが村上さんだ」(冒頭のFA)。
最初に助言した証券会社の中には、「過去に村上さんを追い払った経験があるから」と自信満々なところもあったが、村上氏は内部留保をほとんど吐き出させ用済みになったから出ていっただけ。このFAは、「目的を果たせば去っていくのは当たり前で、それは追い払ったとは言えない。態勢を整えるまで絶対に会ってはダメだとアドバイスした」と明かす。
助言を受けた東芝機械は、面会の実施を再検討。最終的には、社長自身に急きょ重要な予定が入ったこともあり、「他の株主と同様、IR担当者が対応する形をとった」(東芝機械関係者)。このとき、IR担当者として村上氏と対峙したのが、のちに芝浦機械の社長に昇格する坂元繁友氏だった(→インタビュー記事)。
助言が勝敗を左右
その後の展開は下表のとおりだ。20年1月に村上氏がTOBを開始。東芝機械はすぐにFA、弁護士、IR会社、PR会社を集めてチームをつくり対抗する。
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