相次ぐ劇場型の企業買収案件。激しいバトルを裏で支えるプロ集団がいる。言うなれば「M&Aマフィア」。彼らなしに、企業買収や買収防衛の成功はありえない。
歴史的買収合戦の舞台裏
暗闘するM&Aマフィア
M&A案件の成否は、彼らが握っているといっても過言ではない。
2021年9月初旬、コロナ禍で4度目となる緊急事態宣言が発令されている中、極秘のオンライン会議が開催された。
議題は、ある企業が進めているM&Aの戦略についてだ。パソコンの画面には、FA(フィナンシャルアドバイザー)を務める証券会社をはじめ、弁護士やIR(投資家向け広報)会社、PR会社など、そうそうたるメンバーがずらりと並んでいた。
「この提案なら相手企業の株主も納得してくれるはず。強気にいきましょう」。専門家たちからのアドバイスを受け、企業は勝負に打って出ることを決めた。
会議の主催者は、ディスカウントストアのオーケーだ。オーケーは21年6月9日に関西スーパーマーケット(現関西フードマーケット)に対し、水面下で買収を提案。しかし関西スーパーが、8月31日になって突如エイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)との経営統合を発表したため、オーケー側はまるで蜂の巣をつついたような事態になってしまったのだ。
当初オーケーは、関西スーパーがH2Oと手を組むなど「1ミリも考えていなかった」(関係者)。そこで急きょ、専門家たちを招集し、助言を求めたわけだ。
9月3日にオーケーは、水面下で進めてきた関西スーパーに対するTOB(株式公開買い付け)の意向を表明。ここから熾烈なバトルが幕を開ける(下年表参照)。
この案件は一見すると、関西スーパーが欲しいオーケーと、H2O傘下に入りたい関西スーパーとの戦いに思える。しかし実際に戦局を動かしていたのは、それぞれの企業についた専門家たちだった。
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