公用語化でどうなった?楽天社員の英語力 世界で戦うニッポン企業の英語教育

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週刊東洋経済2015年1月10日号(1月5日発売)の第一特集は『最強の英語力』では、一流英会話講師や経営者などによる、個人のオススメ英語学習法についての解説を豊富に掲載している。

武田はレベルに応じた英語の学習支援制度を用意している。英語の会議や管理業務などでハイレベルな英語力が求められる人は週1回、業務時間内か終業後にテンプル大学日本校の講師による2時間の個別レッスンが受けられる。ちなみに、Tスケールで行う英会話の測定者も、テンプル大学日本校の講師だ。ほかにも、英語力が業務で使うレベルに到達していない人は、無料通話ソフト「スカイプ」などによる自習プログラムが受講できる。

最後は総合商社の双日である。ニチメンと日商岩井をルーツに持つ双日は、合併会社ということもあり、競合他社と比べ英語教育体制を整えるまでに時間がかった。しかし、2011年から海外赴任の必須条件として、通常のリスニング・リーディングを測定するTOEIC730点以上に加え、TOEIC S&Wのスピーキングスコア130点以上、ライティングスコア140点以上を設定した(S&Wはともに200点満点)。「TOEIC S&Wは総合商社の中でも、いち早く取り組んでいる」(グローバル人材育成課の統括責任者である阿部洋司課長)。この基準は2012年4月以降に入社した社員が主任級へ昇格する際の要件にもなっている。

双日はTOEIC730点未満の内定者や新入社員にeラーニング教材を提供するほか、商社ならではの支援制度として、入社5年満了までに必ず海外へ1~6カ月間派遣する「短期トレーニー制度」がある。スピーキング力強化のためには、外部の語学学校と連携して、社内に語学講座を開設しているほか、様々な英語学習の機会がある。

「7割弱」が支援制度・補助がないと回答

このように見ると日本企業の英語教育は先進的と感じられるが、これはあくまで限定的な動きだ。ビズリーチが2014年12月上旬に社会人を中心とした251人にアンケート調査した結果によると「(英語学習に関して)会社による支援制度・補助はあるか」という質問に対し、7割弱の回答者が「ない」と回答している。

TOEICテストの運用元である一般財団法人・国際ビジネスコミュニケーション協会による「上場企業における英語活用実態調査 2013年」(2013年1月調査、有効回答数304社)では、グローバル人材育成のための取り組みとして、8割弱の企業が「英語研修」を挙げた。ただ、本調査の回答率は1割未満。まだ社員に対する英語教育機会を積極的に与えている企業は、多くないと見られる。

会社による支援制度や補助がなくても、独学で英語力を上げればいいという考えもできるが、会社のバックアップがあるとないとでは、モチベーション面で大きく変わってくるはずだ。上記3社のような実践的な英語教育機会の付与、および英語学習に関する支援制度・補助の動きが今後広がるかどうかは、先駆者の取り組みがどこまで実を結ぶかにかかっているかもしれない。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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