gumi社長、「ITが日本を引っ張るべき」 上場後の戦略を國光宏尚社長に聞く(下)

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「日本の経済が悪いのは、IT企業の責任」と國光社長は言う。

チームが育ってきたので、15年はThink global、グローバルに発想する、という部分を強化しようと考えている。今まではビジョンを世界中で共有するために、僕も現地に最低3カ月に1回は行って、戦略や方向性をスタッフに話してきた。夜はみんなを集めて食事しながら酒を飲み「世界一ウェーイ」と盛り上がって(笑)。

たとえばデータ解析などは個々よりもグループで手掛けた方が効率的だし、ファイナンスも当然そうなる。個々の強い部分や課題を話し合いながら、統一できる部分を共通化することが次のフェーズだ。

MTVとピクサーがモデルになる

――モデルにしている会社はありますか。

明確に2つある。売る仕組みは世界最大のミュージックチャンネルを手掛けるMTVで、面白いものは映画会社の米ピクサー・アニメーション・スタジオ。20年かけてMTVがグローバル化できたのは、Think global act localを実戦したから。司会者が2人出てくる番組のフォーマット以外は、徹底して現地化することで成功した。一方で巨額の制作費がかかる「MTVアウォード」というキラーコンテンツをグローバルでまとめて作り、全世界に配信することで契約者を獲得していった。

資金があればテクノロジーにも投資できるし、優秀な人にも報酬を支払えて結果的にいいものができる。日本でしか売れないコンテンツなら制作費は限られるが、世界中で売れるならキラーコンテンツを作ることができる。当社も基本的には徹底的なローカル戦略だけど、エース人材には最初から莫大な予算を与えてクオリティから何から他社を圧倒しようと、考えている。映画でも「アバター」や「スターウォーズ」なら見るじゃないですか。本当のトリプルAクラスのタイトルが作れる体制を作りたい。

――スマホゲームでも「スーパーマリオ」のような世界で売れるヒットタイトルが出てきますか。

そうなります。他社がやらないならうちがやる。面白いコンテンツを作る会社としては、どう考えてもピクサーはすごい。だが、すべて分析しきっていますから、正直、彼らは丸裸ですよ(笑)。

僕らが目指すビジョンは世界一。昔から変わらない。僕が思っていることは、日本の景気や経済が悪いのは、IT企業の責任なんですね。資源のない日本がここまで来たのは、ソニーやトヨタ自動車などが勇気を持って海外に進出し、日本を引っ張ってきたから。でも今や製造業は賃金が安い国に勝てなくなっている。だから輸出産業に変わる企業が必要になるけれど、日本のIT企業は全敗ですよ。日本でもっとも大きなIT企業がヤフージャパンて、ジャパンて何?と思うわけです。なかなか日本発で世界に広がった企業は少なくて、それが日本の景気に影を落としている。

だから僕らが世界に出て行き、しっかりとビジネスで勝ち抜いていかなくてはならない。日本の経済が元気になることにつながるといいかなと思っている。うちの会社の裏テーマは「日本を元気に、gumi」です。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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