「中福祉中負担」は幻想--出でよ、負担増を語る“悪役”

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一方、法人税減税は、デフレ脱却には力不足だろう。日本経団連は10年秋、法人税減税などが実現すれば、現在、年60兆円程度の設備投資額は20年に100兆円超に増えるとの試算を出した。しかし、これが100兆円に「増やす」というコミットメントなのか、「増える」という希望的観測なのか、はっきりしない。経団連幹部の口ぶりから察するに、おそらく後者であろう。ただ、経済産業省は12年以降、効果を調べるアンケートを実施する意向で、今回の議論の経緯から考えて、効果が出なければ批判の矛先は経済界に向く。

消費税については、大綱で「早急に検討を行ってまいります」と触れた程度で、数字を挙げた議論に踏み込むことはなかった。藤井調査会は、社会保障制度や財政の「お勉強」からスタートし、肝心の意見の取りまとめ過程では、原則公開だった会合が非公開となった。社会保障のイロハを今頃議論しているようでは悠長すぎるし、こんな大事なテーマを国会議員が公の場で議論できない、という理屈も理解に苦しむ。

省庁の利害代弁に終始

政府税調本体の議論や意思決定のプロセスも気になった。

今年の税制改正は、政府税調一本やりで決める10年度税制改正のやり方を改め、民主党税調の意見を提言として受け入れる体制に変えた。

だが、決定の場である政府税調の議論の主役は各府省の副大臣や政務官だった。会長である野田佳彦財務相はじめ、会長代行の玄葉光一郎国家戦略相や片山善博総務相ら4大臣は多忙を極め、会合の最初から最後まで席を温めることはなかった。必然的に、副大臣が所管省庁の利害を代弁し、議論をリードした。

典型例は証券優遇税制をめぐる議論だろう。結局、10%の軽減税率を20%に引き上げる時期を2年間先送りしたが、政府税調では東祥三・金融担当副大臣と五十嵐文彦・財務副大臣が激しくやり合った。一方、法人税減税では、池田元久・経産副大臣が実質減税を強く主張した。

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