ビジネス界出身の歴史通が選ぶ日本史の傑物4人。広い視野を持ち、経済を重視し、権力者としての手腕にも優れる──。いずれも魅力的な人物ばかりだ。

立命館アジア太平洋大学(APU)学長 出口治明
でぐち・はるあき●1948年生まれ。京都大学法学部卒。日本生命を経てライフネット生命を創業。2018年から現職。歴史に関する著書多数。(撮影:今井康一)
日本史を彩る傑出した人物は誰かといえば、まず次の4人を挙げたいと思います。いずれも魅力的で、人物もユニーク。平清盛と足利義満、織田信長、そして大久保利通です。彼らがなぜ面白いのか、これからご紹介しましょう。
武家政権の形をつくった平清盛

1118~1181年。武家政権を形作る一方で宋銭の輸入をはじめ貨幣経済定着の基礎を築いた(イラスト:安彦良和)
まず、平清盛。武家政権の祖形をほとんど全部作った人です。警察権と軍事権を掌握して、京都から離れた福原から政治を動かした。のちの守護や地頭に当たるものを置いてもいます。その後の鎌倉幕府はすべて平清盛のコピーです。さらに特筆すべきは、日宋貿易を始めて宋銭を輸入したことです。
当時の日本の人口は600万、1人当たりのGDPも中国の半分ぐらいでした。しかも、当時は荘園公領制で、土地本位の経済だった。それまで和同開珎(わどうかいちん)など通貨を発行したことはありましたが流通量が限られ、実質的な貨幣ではなかった。いわば、見せガネでした。
では、誰に見せるためだったかと言えば、中国や周辺の国に対してです。「日本も“カネをつくる”ほどの国力があるのだ」と対外的にアピールするだけで、誰も使わなかった通貨だったんです。
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